今夏読んだ洋書について
今夏読んだ洋書について
今度はこの夏休み期間中に読んだ洋書について、備忘録を残しておきたいと思います。まず、ビッグ・ビジネスを擁護する見解を綴った本から紹介しましょう(9月14日に追加したものをアップロードします)。
- Cowen, Tyler (2019) Big Business: A Love Letter to an American Anti-Hero, St. Martin’s Pressp
p. 102
われわれはグーグルがDejaNews、YouTube、Android、Motorola Mobile、Wazeを含む190もの会社を購入するのを見たが、他方で、フェイスブックはInstagram、Spool、Threadsy、WhatsAppなどを買収したほか、以前のライバル、Friendsterから知的所有権を購入した。
p. 103
トップ8の検索エンジンのある格付はつぎのようになっている。
Bing
Yahoo
Ask.com
AOL
Baidu
WolframAlpha
DuckDuckGo
pp. 121-122
ビッグ・テック会社に関するもう一つの良いことは少なくとも当初、それらの会社がワシントンにロビイ活動にほとんどまったく関心を示さなかったことである。大部分のケースにおいて、それらはワシントンに小さなオフィスをもつか、あるいは、初期にオフィスをもたず、政府にあまり嘆願せず、ほとんどの場合、そっとしておいてほしいと願い、それらの競争相手に対する法的規制を要請しなかった。おそらくご存知のように、政府の問題へのこの関心不足のために1998年のマイクロソフトに対する反トラスト提訴を含む否定的な結果がもたらされた。シリコンヴァレイのCEOらの何人かはオバマのホワイトハウスへのもっとも頻繁な訪問者だが、CEOらはいまになってドナルド・トランプの因襲的でない大統領職務と渡り合っている。たしかに、彼らは大統領によって供応されるのを好んだが、しかし、うまくつながることが会社経営をうまく継続するために必須であるという困難さもまた学んだ。……
多くの批評家と異なり、わたしはデータに対するプライバシー違反が受けいれがたいとか、あるいは世界の終わりであるとか思わない。個人がソーシャル・ネットワークに参加したり、あるいは、オンライン・ストアーで買い物をしたりするとき、たとえデータがどのように流通・利用されるかについて十分な感覚をもっていないにしても、彼らはデータが収集され彼らについて蓄積されていることを知っている。彼らはトレード・オフを経験し、多くの個人はこれらの活動を喜んでつづけてきたのだ。さらに、多くのフェイスブック利用者はむしろ熱心にサービスを分かち合っている。たとえば、クルマ買う資金がないためにバスに乗るというような不承不承、サービスを利用しているといった印象を彼らは与えているわけではない。わたしはここで問題がないと言っているわけではない。むしろ、わたしがしばしば目の当たりにするのは、インターネット利用者が直面するディレンマを誇張するプライバシー批評家だ。もしフェイスブックが実際にきわめて恐ろしいのであれば、なぜより多くの人々がe-mailリストを可能な選択肢としてセットアップするのだろうか。
p. 123
プライバシー状況の悪化について⇒第一に、顔認証技術が広がりはじめ、それらがますます正確になっている。
p. 124
はじめにわれわれが必要としているのは、顔認証に関するより良い公的な議論であり、デフォルトやオプトアウト(異議があれば削除する)・ルールの詳しい吟味であり、われわれは市民の顔のイメージや、おそらく市民の足取りのパターンに対するより大きな所有権を市民に与えることを考慮すべきだ。
音声記録は将来に向けたもう一つの心配事である。
p. 129-130
1998年にDavid BrinはThe Transparent Societyという有名な本を出版した。彼は、個人がそのプライバシーを失いつつあることを記述しているが、これが全般にいいことかもしれないと思いをめぐらせている。彼がこの発展を歓迎する理由として強調したのは、腐敗の目立った減少をもたらすだろうということであり、われわれが実際にはだれであるかについてオープンになったり、評判や競争上のチェックを強化したりする点であり、それは「より偉大な透明性」や単なる「プライバシーの損失」ではないものとして記述されうる。……何年かたつにつれて、そううまくはゆかないとわたしは思うようになる。第一に、われわれはオープンさや透明性がわれわれが考えるような真実をもたらしそうもないことを学んだ。すべての情報ないし多くの情報がインターネット上にある世界では、一部の政治家はより多くの嘘をつく。……透明性の反腐敗効果は喧伝されたものよりも弱いように思われる。
長くなるので、つぎの本を紹介しましょう。それは、ゴースト・ワーク(Ghost Work)と呼ばれるAIにディープラーニングをさせるために必要になる仕事について書かれたものです。
- Gray, Mary L. & Suri, Siddharth (2019) Ghost Work: How to Stop Silicon Valley from Building a New Global Underclass, Houghton Mifflin Harcourt, 2019
まず「導入」にある「マシーンにおけるゴースト」という最初の部分を紹介したい。「携帯電話アプリ、ウェブサイト、人工知能システムを動かす人間労働は見出だすのが難しく、事実、しばしば意図的に隠されている。われわれはこの曖昧な雇用世界をゴースト・ワークと呼ぶ」としている。
p. ⅹⅹⅸ(29)
We examined four different ghost work platforms: Amazon.com’s Mechanical Turk (MTurk); Microsoft’s internal Universal Human Relevance System (UHRS); the socially minded startup LeadGenius; and Amazon.org, a nonprofit site dedicated to translating and captioning content for transnational audiences and people with hearing disabilities.
p. 7
Fei-Fei Li, a computer science professor and co-director of the Stanford Human-Centered AI Institute, and her colleagues wanted to solve a much more general problem than how to train AIs to recognize a specific object, like a couch. They wanted to train machines to recognize the main object in an image, no matter what that object may be- a dog, a person, a car, or a mountain. To do it, they needed more training data than a single person could generate alone. Much more.
Li and her colleagues first wrote software to download millions of images from the World Wide Web. At first, they hired a team of undergraduates to label each image-the academic equivalent of hiring a temp worker. After testing this method, they could extrapolate how long it would take to complete-about 19 years. So they switched strategies. Next they tried developing machine learning algorithms to automatically guess labels for images and turn to human help for the ones that stumped the machines. This approach failed, because the machine learning algorithms made too many errors, and they were looking for highly accurate or “gold standard” data that other scientists could later reuse. Indeed, if this problem were easily solvable by machines, they wouldn’t have needed this data set in the first place.
Shortly after, in 2007, Li and her colleagues found MTurk, and they realized that MTurk API (application programming interface) gave them a way to automatically distribute image-labeling tasks to people and pay them. They tried a few different workflows but were ultimately able to use about 49,000 workers from 167 countries to accurately label 3.2 million images.
細かい話がまだまだつづきますが、ここでつぎの本に移りましょう。
- Pomerantsev, Peter (2019) This is Not Propaganda: Adventures in the War Against Reality, Faber & Faber
この本はロシアにおける「情報戦争」、ディスインフォメーション工作について論じています。
p. 109
1990年代と21世紀の最初の10年に情報戦争というアイデアが歴史、そしてことにソ連の失敗を理解しようとする安全保障エージェンシーと結びつけられたロシアの地政学のある種の分析家に憑りつきはじめた。秘密機関のエージェントはソヴィエト帝国が崩壊したのは貧しい経済政策、人権濫用、嘘のためではなく、自由な言論や経済改革(Operation Perestroika)のようなトロイの馬のアイデアを通じた西側の秘密機関によって植えつけられた情報ウィルスのためであったというアカデミックな主張に転じた。……
情報戦争の目立った公的推進者の一人はイーゴリ・アシュマノフである。彼はしばしばTVトークショーやラジオにゲストで登場した。
p. 110
アシュマノフの大きなアイデアは「インターネット主権」である。それは、どのような情報が人々に届くかに対する政府のコントロールであり、それは中国がグレート・ファイアウォールや検閲とともに遂行過程にあるものであり、西側が「言論の自由」に語ることで傷つけようとしているものだ。彼が議論するところでは、情報主権は情報のいくつかの流れを通すためにあなたの合理性を保護するためのイデオロギーなしいは達成されえない。
「もしあなたのイデオロギーが自由主義をともなったものとして輸入されれば、あなたはいつでもだれかによっていつでも変更される外国のルールに対していつもプレイすることになる。あなたは民主主義のルールを破るのは罪であると言われかねない。イデオロギーは、作戦システム、ロケット、インスリン、穀物のように国の内部において創出されなければならない。情報主権によって支援され、保護されなければならない」
この世界観では、情報は本質に先立っている。第一に、あなたは情報戦争目標をもち、そしてあなたはそれに適合するイデオロギーを創出する。イデオロギーが正しいか間違っているかは関係ない。それはただ戦術的な機能に資することが求められている。冷戦へとつながる衝突理念に代わって、ここで情報戦争はイデオロギーの創出を必要としている。
p. 229
ケンブリッジ・アナリティカはNigel Oakesが創出した会社、Strategic Communication Laboratories (SCL) からのスピンオフであった。
p. 231
1989年、OakesはBehavioural Dynamics Instituteを設立した。その使命は説得に関するすべての歴史的調査を収集することであった。……
同研究所は社会グループを定義する新しい方法を開発した。記述的範疇(年齢、性別、社会的階級)は行動予測としての利用を制限されるようになった。
p. 232
1993年にBehavioural Dynamics Instituteはその発見物を集めて、OakesはSCLを創出した。
p. 233
2008年、もう一人のイートン校の生徒、Alexander NixがSCLに参加した。彼はOakesとは異なるタイプであった。彼は信じがたいほど裕福な背景をもち、大学で歴史を研究した。……2012年、NixはSCLの選挙部門を取り出し、それを自分のものとし、それをCambridge Analyticaと改名した。
Cambridge Analyticaは人々のソーシャルメディアの利用を見ることで「行動変更」方法を繰り返し熱心に試した。
p. 237
彼らはdisinformation(content designed to mislead)とmisinformation(content that misleads by accident)とを区別しようとした。
最後に、本ではありませんが、WiredのSep 2019に掲載されているGoogleをめぐるpp. 80-95の大部の記事についてラインマーカーを引いた部分を紹介しておきたいと思います。
- Tike, Nitash, “Three Years of Misery Inside Silicon Valley’s Happiest Company,” Wired, Sep 2019.
p. 82
1月30日はドナルド・トランプ大統領の10日目であった。そして、大統領令13769(イラン、イラク、ソマリア、スーダン、イエメンからの市民に対する米国への旅行禁止および米国避難民資格の大規模停止)が73時間で有効となり、米国の空港で数百人を軟禁状態に閉じ込めた。……トランプ時代のこうした最初の日々において、Googleの指導者は死に物狂いになって新しい政権との対立を避けようとした。オバマ政権との近い関係という会社の歴史のために幹部は反動的動き(Google自身のビデオプラットフォームであるYouTubeにおいて部分的生み出された)にとくにさらされやすいという気持ちにさせた。その反動的動きは継承・結集し、トランプへの投票につながった。(それは、当時、Googleの親会社、Alphabetのexecutive chairmanのEric Walkerがヒラリー・クリントンの選挙アドバイザーになったことを助長したわけでもないし、あるいは、Google従業員による政治的寄付の90%ほどが2016年に民主党員に向けられたことを助けたわけでもない)。
……
1990年代後半にスタンフォード大学大学院生としてGoogleを設立した、前のモンテッソーリ教育を受けていたLarry PageとSergey Brinは自由な思考を促すために彼らの会社の名高い自由な文化をデザインした。従業員は、彼らが同意できない何事かを見て取った場合には「反対することを義務づけられた」し、彼らの政治信条や個人的生活をチェックするよりもむしろ働くために「自己本位でやる」ことが奨励された。
p. 84
2015年11月、Kevin Cernekee(Googleの社会正義政治アジェンダの現状を変えようとうるさく主張した)はNational Labor Relations BoardにGoogleの警告が彼の政治的見解への報復となっていると主張して提訴した。彼はまた、叱責がNational Labor Relations Actのもとで定義された「保護された取り決められた活動」に従事する彼の権利(ことに仕事場の条件を自由に議論する権利)に干渉したと申し立てた。
CernekeeはGoogle内部で目立っていたために、オープンなインターネットにおいてはほとんど目立たなかった。その結果として、Googleのもっとも有名な異端者となったのはCernekeeではなかった。Google検索のエンジニア、James Damore(生物学的な相違がエンジニアの性ギャップを説明するのを助けているとの主張するメモを書いた)がその人である。
Damoreは2017年6月後半、Googleでの多様性促進に関する会社のイヴェントに出席し、接待された。そこで彼は、主催者が特別の仕事のインタヴューをしたり、女性や過少表示されているマイノリティ向けのより喜んで受けいれられる環境を提供したりすることを議論しているのを聞いたと主張する。Damoreにとって、これはGoogleの能力主義的採用過程、客観的に資格をもつエンジニアを認証するために構築された見事な立派なシステムの違反のように感じられた。
p. 85
その直後に、中国への出張から戻るための飛行機で、Damoreは生物学的差別がGoogleで女性のエンジニアが少ない理由や、Googleの男女平等への試みが間違った方向や男性への差別に向っている理由を説明する一助になりうると論じるメモを書いた。⇒リーク
p. 87
2017年8月2日 2018年1月8日
Damore⇒解雇 DamoreはGoogleを提訴
2018年2月28日
Google Cloudのプロジェクトマネジャー、Meredith WhittakerはGoogleが秘密裏に落札した後で、そのプロジェクト・メイヴェン(Project Maven)に反対する内部請願
2018年6月1日
GoogleはMavenを更新しないと決定
2018年6月7日
Sunder Pichai(GoogleのCEO)は一連のAI原則を公表し、Googleは広範に受けいれられた国際法や人権の原則に技術の目的が矛盾するような技術を構築しないと宣言した
2018年8月1日
InterceptはGoogleの中国における「試験的な」検閲検索エンジン、ドラゴンフライ・プロジェクト(Project Dragonfly)計画を暴露した
p. 88
Andy Rubin⇒Googleが2005年に5000万ドルほどで取得したスタートアップ、アンドロイド(Android)の共同創設者
2006年、Googleは北京に事務所を開設し、中国における検索エンジンの検閲されたヴァージョンをスタート。従業員はこれをGoogleの原則への明確な違反とみていた。
中国に参入することを嫌っていたBrinは中国の検閲に従うのをやめ、その攻撃について人々にはなすべきだとPageを説得した。⇒2010年1月、北京のGoogle事務所の従業員は会社が中国から撤退すると公的ブログに公表したことを知った。
PageとBrinは10年以上、クラウドに焦点を当ててきた。彼らは世界中に素晴らしいデータ・センターの集合体を構築した。
p. 89
GoogleがGoogle Cloud Platformと呼ぶサービスをついに提供した2012年までに、Amazonはすでに先行していた。2015年4月、Bezosは、Amazon Web Servicesが前年に46億ドルの収入をもたらし、彼の小売ビジネスの売り上げをまもなく上回る軌道にあると明らかにした。
Appleは2010年以降、中国でapp storeを経営してきた。Microsoftの検索エンジン、Bingは2009年以降、検閲された検索結果を提供してきた。LinkedInさえそこにいた。ところが、Googleは、Xiaomiのような携帯電話メーカーが非公式のAndroidヴァージョンに基づく携帯電話を売るのを見ていた。これが意味していたのは、Google Searchがホームスクリーンにないことであり、Googleのapp storeもなく、数百万のデヴァイスから資金を稼ぐ方法もなかったということだ。
2015年、Alphabetは大規模な再組織化に着手した。会社の優先事項となったのは、中国における新しい一歩とクラウド・コンピューティングであった。
……
Google、Amazon、IBMはすべてMaven契約にかけつけていた。しかし、Googleは特別に人目を忍んだ競争者であった。同社は静かに契約者を経由して応札し、ペンタゴンが事前承諾なしにGoogleについて言及することを禁じた。……GoogleがMaven契約を2017年の9月に落札したとき、会社は何も言わないことを選択した――従業員に対してもだ。
p. 90
2月までにMavenに関する言葉がそのプロジェクトに対してLiz Fong-Jones(site reliability engineerで社内活動家)に警報を最初に出したエンジニアチームの外で渦を巻き始めた。このため、彼女は内部のGoogle+ページにMavenについてポストすることに決めた。そして、Googleは米国政府が無人機爆撃を実行するのを手伝うことになるかもしれないという重大な関心事を分かち合う。
p. 91
3月、GizmodoはMavenの話を人々に流した。
4月4日、The New York TimesはMeredith Whittaker(プロジェクト・メイヴェンを止めるようGoogleに求める請願を組織した前Google Cloud program manager)の請願に関する話を暴露した。その請願は3100以上の署名をそのときまでに集めていた。4日後、月曜日の夜10時、Whittakerは彼女をMavenに関する4人の内部討議に参加するよう招聘するメールを受け取った。
5月30日、The New York TimesはFei-Fei LiがAI武器化について他の幹部に送ったメールを含むMavenに関する話を公表した。2日後の毎週のクラウドチームの会合で、Greeneは、GoogleがMaven契約を更新しない計画であるとのべた。
p. 92
2カ月後、PichaiがAI原則をすでに破ったと多くの従業員には思われた。8月1日、Interceptの「大型爆弾」ストーリーが伝えたところでは、Googleは中国で新しい検閲される検索エンジンを開始することを計画しているというのだ。Project Dragonflyというコードネームがつけられ、エンジンは「人権」や「学生抗議」のような検索用語をブラックリストに入れ、「空気の質」のためにコントロールされた結果を政府に提供する。
……
DragonflyのためにGoogleは右派の指導者からの攻撃を受けやすくなった。ミネソタ州選出の共和党の現上院議員、Josh Hawleyは、Googleはいかなる国への忠誠よりもカネにより多くを動機づけられているとのべた。
p. 94
Pichaiは下院司法委員会の聴聞会でDragonflyについての質問に答えるために召喚された。「いますぐ、中国で検索プロダクトを開始する計画はない」と彼はのべた。
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