日本の主要マスメディアの不誠実極まれり:なぜJapan Timesの特ダネ(日本にタイフォン・ミサイル配備検討)を報じないのか
2024年9月10日、いつものようにロシア語の新聞「コメルサント」のサイトを読んでいると、「米軍のタイフォンがアジアを闊歩 米国、ロシアとの条約で禁止されていたミサイルシステムを日本に配備へ」という興味深い記事を見つけた。
それによると、「Japan Times(ジャパンタイムズ)は、クリスティン・ウォーマス米陸軍長官(国防総省の文民最高職)の発言を引用し、アメリカのタイフォン日本配備計画を報じた」と書かれている。そこで、示されているURLにアクセスすると、「米陸軍長官、日本における中距離ミサイルを想定した訓練を視野に」という記事が9月7日付で配信されていたことがわかる。
だが、9月10日午前10時半の段階で、Japan Timesの特ダネに関連したほかの日本語報道を見つけることはできなかった。
私が遺憾に思うのは、日本の主要マスメディアの鈍感さであり、不勉強だ。いつの間にか、日本が戦争に巻き込まれかねないような事態が着々と進んでいる現実を迅速に報道することは彼らの使命だろう。それにもかかわらず、この反応の遅さに絶望感さえいだく。
Japan Timesの報道
Japan Timesによれば、アメリカは合同軍事演習のためにミッドレンジ・ミサイル・システム(中距離ミサイル・システム)を日本に配備することに興味を示していると、アメリカ陸軍長官が語ったというのだ。ウォーマス米陸軍長官は9月4日、Defense News Conferenceというイベントで、陸軍のマルチドメイン・タスクフォース(「タイフォン」としても知られるミッドレンジ・キャパビリティ・ミサイル・システムを擁する新部隊)の配備について、先月日本を訪問した際に話し合ったことを明らかにしたというのである。
彼女は、「木原(稔)防衛大臣と素晴らしい議論ができた」と話したうえで、「もちろん、私たちは…マルチドメイン・タスクフォースが…日本を拠点として活動する様子を…(演習の一環として)…非常に興味深く見守っていると思う」とのべた。
さらに、「私たちは日本の自衛隊に対して、この件への関心を明確にしている」としたうえで、配備は「日本政府のペースに合わせる」とまで語ったのである。
「タイフォン」とは
「コメルサント」によれば、タイフォンは、冷戦終結と、トランプ政権下の2019年に1987年の中距離核戦力全廃(INF)条約から脱退して以来、米陸軍初の陸上型中距離攻撃手段である。その発射装置は、基本的にMk41艦載垂直発射装置の陸上型バージョンだ。米国防総省は2020年11月、ロッキード・マーチンとこれらのシステムを製造する契約を結んだが、これはこのようなシステムの開発を禁止していたINF条約が崩壊してからわずか1年後のことだった。1987年に米ソ間で結ばれたこの条約では、射程500~5500キロの陸上ミサイルやその発射装置の実験・配備は禁止されていた。
タイフォンは、トマホーク巡航ミサイル(射程1800kmまで)とスタンダードSM-6多目的ミサイル(現行型では射程500kmまでだが、将来型ではさらに長くなる見込み)を発射できる。将来的には、タイフォン砲台はマルチドメイン・タスク・フォース(MDTF)の戦略火力部門の一部になると想定されている。また、新型PrSMミサイル(射程500km以上)を搭載した高機動多連装ロケットシステム(HIMARS)のバッテリーや、極超音速ミサイルのダーク・イーグル(別名、長距離極超音速兵器、LRHW、射程2775km以上と謳われている)も含まれる。
米軍は4月、フィリピンにタイフォンを配備
米陸軍は4月、射程1600キロのトマホーク巡航ミサイルとSM-6ミサイルを発射できるタイフォン発射機を、フィリピン北部での合同軍事演習のために初めてインド太平洋地域に配備した。この配備は今月中に終了する予定だ。
Japan Timesは、「日本は近年、米国が同盟国に同様の兵器を配備する可能性を強調する報道を繰り返し否定してきた。日本国内に配備されれば、配備先が事実上、中国自身の強力なミサイル兵器の標的になってしまうからだ」と書いたうえで、「否定はしているものの、東京がそのような動きを検討している兆候はある」と指摘している。
いずれにしても、日本国民の生命と財産に直接かかわる大問題について、アメリカ側と日本側とで説明が異なっているというのは由々しき事態だ。国会で追及するのは当然だし、自民党総裁選や立憲民主党代表選でも、立候補者にこの問題について尋ねる必要があるだろう。
ヨーロッパ配備に留意せよ
この際、誤魔化されてならないのは、今年7月、米国が2026年からドイツ領内に中距離・短距離地上配備ミサイル(SM-6、トマホーク、ダーク・イーグル)を配備することが明らかになったことである(これもMDTFの一環)。加えて、米国はすでに2度、Mk70モジュラー・コンテナ・ミサイル・システム(海軍用に設計されたタイフォンのような設備)をデンマークのボーンホルム島に持ち込み、演習中に配備したことがある。
日本政府が「演習のための一時配備を検討している」と言ったとしても、それは必ずや恒久的配備につながる可能性が高い。
だからこそ、プーチン大統領はこの配備をめぐって、「ロシアはアメリカとヨーロッパの同盟国に報復する」と警告している。彼の発言から判断すると、ロシアは、これまで禁止されていたシステムがいずれヨーロッパに恒久的に出現すると確信している。この延長線上で、中国はもちろん、ロシアも日本のタイフォン配備を警戒している。
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