オールドメディアのひどさと学者の無責任

いま、本用原稿を書いているので、きわめて忙しい。1週間に一度のペースで「現代ビジネス」と独立言論フォーラム用の連載も書かなければならない。というわけで、このサイトへの執筆はサボってきた。

 

オールドメディアのひどさ

あまりに休憩するのは、まずいので、本用に書いた原稿のごく一部をここに紹介してみたい。書いているうちに、沸き上がってきたのは「怒り」である。マスメディアはまったく信用ならない。

最近、伊藤實の登場するビデオを観る機会があった。そこで紹介されていたのが、1999年に実施された上院議会証言の話であった。きわめて重要な発言があったにもかかわらず、主要マスメディアはすべてネグった。これが米国のオールドメディアの本質であるというのである。

これをヒントに本用に書いた部分を紹介しよう。

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具体例を示そう。1999年の出来事を紹介しよう。1973年から1998年まで中央情報局(CIA)に勤務し、ロナルド・レーガン大統領時代には大統領特別補佐官も務めたフリッツ・エアマースは1999年9月23日、上院外交委員会で証言台に立った。なぜそんなことになったかというと、同月12日付の「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)に「スキャンダル、そして見せかけ」という意見を掲載したからである。

 1993~2001年まで大統領を務めたビル・クリントンは1991年のソ連崩壊後、その継承国となったロシア連邦の「市場経済化」を支援する一方で、ポスト冷戦下の安全保障体制の構築に取り組んだ。しかし、そのクリントン政権の腐敗に満ちたやり方について、ついにCIA職員という、いわば「身内」が噛みついたのである。彼はその記事のなかで、つぎのように書いている。

「政権は、ロシア改革と謳ったものの上から下まで腐敗していることを見過ごした。また、元政府高官たちが今になって明らかにしているように、それに関する率直な情報報告や外交報告を抑制した。この沈黙が、われわれの政策、特に国際通貨基金(IMF)の融資を守ったのである。」

 こんな政権批判を書いた結果、議会証言するよう求められたわけだ。その意味で、彼の証言内容は注目されていた。しかし、その内容についてNYTを含めて、主要マスメディアが報道した形跡を見つけ出すことはできなかった。彼らは、その内容の深刻さを知り、隠蔽したのである。多くが民主党支持であるために、クリトン政権の内幕を暴くことを躊躇したのだ。

 その議会証言録をみると、つぎのような発言がある(ビデオでも確認可能だ)。

「KGBと共産主義指導部の庇護の下、この活動の多くが加速した1980年代後半の時期を含めれば、非常に大雑把に資本逃避と呼ばれる形で、2000億ドルから5000億ドルがロシアから流出したと推測される。」

 どういうことかというと、米国は「天然資源と生産力に恵まれた国」、ロシアから、国際通貨基金(IMF)の融資などを使って、「縁故資本主義」(crony capitalism)を通じて多くの富を盗み取ったというのである。膨大な資源や企業が、しばしば旧共産党員の手によって、投げ売り価格以下で民間人の手に渡された。企業は、年間収益の現金価値を下回る価格で売却されたケースもある。輸出入特権は取り巻き連中に配られた。このように、当初から民営化のプロセスは国家と社会を犠牲にした詐欺的なものだった。これこそ、IMFが主導したロシアの市場経済化の真の姿であったというのである。

 それにもかかわらず、主要マスメディアは彼の証言を隠蔽した。クリントン政権が大きくかかわってきた「改革」が本当はロシアからの「窃盗」であったという話は、民主党支持者の多いマスメディアには報じられなかったのだ。この不誠実なマスメディアの本質はいまでも変わっていないことを肝に銘じてほしい。

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ヘゲモニー国家アメリカはこうしてロシアから窃盗した。それに協力したのはオールドメディアだけでなく、学者もそうだった。その代表的人物こそ、アンダース・アスルンド(アンダース・オースルンド)である。1991年11月から1994年1月まで、オスルンドはジェフリー・サックスやデヴィッド・リプトンと共に、ボリス・エリツィン大統領やエゴール・ガイダル首相代理の下でロシア改革政府の上級顧問を務めた。この人物こそ、ロシアの市場経済化を推進した「インチキ野郎」だ。

 

殺人幇助しても罪に問われない学者たち

私は、その昔、このIMFが推進した市場経済化策のひどさを厳しく批判する記事を「朝日新聞」に掲載したことがある(実家に戻れば現物があるはずだが、コンピューター上ではよくわからない。わかる人は教えてほしい)。この記事を読んだ日本のアジア駐在大使が褒めていたと同僚から聞いたことがある。

そのころ、私は、まったく間違った政策で、多くのロシア人が自殺したり、極貧に陥ったりしたことを知って、こんな事態を招いた人々が何の罪にも問われないのはおかしいのではないかと感じていた。

旧石器遺跡捏造事件を思い出してほしい。2000年10月5日付毎日新聞の朝刊がスクープしたこの事件は、藤村新一という、特定非営利活動法人・東北旧石器文化研究所の副理事長が遺跡に石器を埋め込むことで、石器のあった年代をどんどん古くまで遡らせ、旧来の学説をなんども塗り替えてきたことを暴露したものだった。藤村の「発見」と、それを信じた学者やマスメディア、それに官僚は「世論」を誘導し、数多くの教科書の記述の変更がなされるまでに至る。だが、藤村の捏造が暴露された後になっても、その罪は問われることもないままに終止した。彼の捏造で直接・間接に利益を受けた官僚やマスメディアの人々もまた犯罪に問われることもなかった。嘘を見抜けず、その嘘を国家権力が教科書を通じて拡散させたにもかかわらず、国家権力自体もまたなんの責任もとらなかったということになる。

いま、ウクライナをめぐって、駄弁を弄している「似非専門家」をテレビでながめていると、この藤村と同じような無責任な連中として唾棄したくなる。

どうか、オールメディアのひどさに気づいてほしい。そして、オールドメディアに登場する人物を少なくとも疑ってほしい。彼らの多くはまったく信用できないからだ。

 

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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