アメリカ大統領選から感じること:「気高い嘘」は認められるのか

アメリカ大統領選から感じること:「気高い嘘」は認められるのか

サンダースとバイデンに絞られた米民主党の大統領候補者選びをみるについて、「気高い嘘」は認められるかという問題に突き当たる。

このサイトに、2019年2月、「「高貴な嘘」(noble lies)について考える」という記事(https://www.21cryomakai.com/%E9%9B%91%E6%84%9F/710/)をアップロードしたことがある。まあ、「高貴な嘘」でも「気高い嘘」でもかまわないのだが、問題は、プラトンが、「神は、支配者として能力のある者には、その誕生に際して、金を混ぜ与えた」と主張し、支配者たる哲学者によるnoble liesを許容していたところにある。いわば、安定的な統治という目的のためには、手段を選ばず、「嘘も方便」と開き直ることを認める立場ということになる。

 

バイデンの嘘はnoble liesとして正当化されるのか

いまの候補者選では、いわゆる中道派のバイデンがトランプに勝てる候補者としてサンダースを上回ろうとしている。しかし、バイデン父子がウクライナにおいてろくでもないことをやってきた事実については、拙著『ウクライナ・ゲート』や『ウクライナ2.0』のなかで紹介した。「論座」には、「バイデンはウクライナ新興財閥の「屋根」か」という記事(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019101000004.html)を書いた。いまさら、この親子の腐敗ぶりを紹介することはしないが、バイデンという政治家はいわば「わかりにくい悪人」ということになるのではないか。

オバマ大統領時代の副大統領として、黒人大統領と「うまくやった」という印象から、バイデンは黒人に人気があるらしい。しかし、こいつがいかにウクライナで王様然とふるまい、バカ息子の収賄を黙認してきたかを知れば、人間として最低な奴と思えるに違いない。しかも、そうした自らおよび息子の行為を謝罪したり反省したりしているわけでもない。要するに、頬かむりして無視しているだけの話なのだ。

わたしはこういう人物が嫌いだ。感覚的に許せない。したがって、こんな輩が大統領候補に選ばれることを望ましいとはまったく思わない。ゆえに、バイデンとトランプが大統領の座を争うとすれば、バイデンよりもトランプが大統領になるほうがいいと言わざるをえない。なぜなら、トランプは「わかりやすい悪人」であり、こうした悪を批判するのは簡単だからだ。「わかりやすい悪人」は監視しやすく非難するのも容易だから、彼の統治はある程度まで制御可能なはずだ。もちろん、米国がおかしな方向に向かうのを早めたり、問題解決をより困難にしたり、さまざまな問題を引き起こすかもしれないが、バイデンという「わかりにくい悪人」は隠密裏に取り返しのつかないような巨悪を行いかねないと懸念される。

 

横倉義武日本医師会会長=バイデン

わかりやすい話をしよう。3月8日、「論座」に、「新型コロナ対策 オンライン診療を推進せよ」(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020030700002.html)という論考をアップロードした。そのなかで指摘したのは、日本医師会の横倉義武会長が新型コロナウイルス感染症(DOVID-19)対策の要望書を安倍晋三首相(以下、いつものようにDishonest Abe)に手渡しながら、自分たちにとって不利益をもたらしかねない「オンライン診療」の推進という要望を盛り込まなかったことである。つまり、何も知らない人からみれば、日本医師会はDOVID-19対策に熱心に取り組んでいるように見えるのだが、実は、自分たちに不利なことには口をつぐみ、医師として最善をはかろうとはしていないことを隠蔽しようとしていることになる。そう、横倉はバイデンと同じく、「わかりにくに悪人」と言えるだろう。

「わかりにくい悪人」の化けの皮をはぐには、それなりによく勉強し、彼らの悪を糾弾できなければならない。本当は、政治家や学者、マスメディア関係者などが識見を高めて、こうした「わかりにくい悪人」を批判すべきなのだ。しかし、日本では、本当に不勉強なバカが多い。ゆえに、「わかりにくい悪人」が大手を振って偉そうにしている。

そこここにいる「わかりにくい悪人」がテレビに登場している。正論を吐いているように見えるのだが、実は腹黒い「わかりにくい悪人」か、不勉強な根っからのバカのいずれかであると断言してもよい。これから注目してほしいのは、「オンライン診療」の推進といったことをだれが指摘できるかだ。この問題について、だれが国会でDishonest Abeを追及するかをよく見てほしい。もしだれもいなければ、もうこの国は「悪人」か、バカしかいないことになるのではないか、と心配している。

 

巨大になるすぎたロビイスト、日本医師会

ここではっきりと指摘しておきたいのは、日本医師会は巨大化しすぎたロビイスト機関であり、それが日本の医療をダメにしているという事実である。日本歯科医師会の政治活動団体、日本歯科医師連盟は2004年に日歯連事件を引き起こしたことがある。これに対して、日本医師会は少なくとも日歯連事件のような大事件に塗れたことはない。しかし、その実態は日本の医療を腐敗させている元凶と言える。反官僚・反自民だった武見太郎会長時代と異なって、自民党と結託して日本の医療を医師本意の腐った状況に放置させているのだ。だからこそ、自分たちに不利な「オンライン診療」など、鼻からやる気がないのである。

残念なのは、水野肇が2003年に『誰も書かなかった日本医師会』を上梓して以降、日本医師会を批判するしっかりとした考察がみられないことだ。ジャーナリストの能力は絶望的なほど劣化してしまっている。

最近では、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長が「医学部の病弊が映す日本の医療制度の根本弱点」という記事(https://toyokeizai.net/articles/-/320641)を2019年12月に公表している。わたしがもっと若くて元気であれば、日本医師会の巨悪を暴くために最大限の努力を惜しまないだろう。「21世紀龍馬」たらんとする若者に奮起を促したい。

 

Dishonest Abeも同類か

Dishonest Abeも「わかりにくい悪人」なのだろうか。この人の場合、「バイデン=横倉」に比べると、トランプに近いように思われる。「わかりやすい悪人」の側だ。なぜなら、公文書の改竄・隠蔽、公職選挙法違反を公然と行いながら、日本の検察や政治家、マスメディアがだらしないために捕まらずにすんでいるだけの「悪人」だからにすぎないからだ。つまり、首相という権力者であるために、「わかりやすい悪人」であっても偉そうにしていられるというわけだ。それは、弾劾裁判で「無罪」を勝ち取った「わかりやすい悪人」、トランプとよく似ている。ただし、日本は首相の犯罪を直接裁くことさえできずにいる。

それでは、「わかりやすい悪人」であるDishonest Abeは「わかりにくい悪人」よりも増しなのだろうか。残念ながら日本は大統領制ではないので、「トランプかバイデンか」といった選択に迫られることはない。ゆえに、Dishonest Abeの対抗馬がはっきりしない。まあ、自民党のだれかが対抗馬になるにしても、Dishonest Abeほど「わかりやすい悪人」と呼べるような人物ではないだろう。逆に言えば、「わかりにくい悪人」である可能性が高い。この場合、Dishonest Abeのほうがいいとは思わない。なぜなら「わかりやすい悪人」であるDishonest Abeはすでに「犯罪者」である可能性がきわめて高いからである。ゆえに、こんな人物が政治家をやっていること自体が問題なのだ。

自民党の「わかりにくい悪人」の一人は小泉進次郎だろう。まったく無能でありながら、世襲議員のために、不定見なマスメディアにちやほやされている。ゆえに、「わかりにくい」のだが、その中身は「悪人」だ。国民の税金から支払われるカネで、女性とホテルで密会した費用を支払わせている。こんな「悪人」に日本の統治をしてほしいとは思わない。加藤勝信厚生労働大臣に至っては、預託商法を展開して破綻した「ジャパンライフ」の「広告塔」であったと言われている。こちらは、「わかりやすい悪人」だが、こんな「悪人」ばかりを閣僚に据えているのがDishonest Abeなのである。やっぱり、安倍は「わかりやすい悪人」だとつくづく思う。

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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