21世紀龍馬会
21世紀龍馬会への招待
2017年4月、「21世紀龍馬会」を設立した。当会は19世紀に生きた龍馬の朱子学に毒された封建制への挑戦と同じように、21世紀を生きる若者に時代遅れの近代的諸制度への懐疑喚起を願ってにつくられた。いわば、21世紀龍馬会は勉強会の場となる。
すでに2017年4~7月に4回、21世紀龍馬会を開催した。今後、このブログを活用していきたい。
代表を務める私について知らない人に向けて、この会の設立に至る経緯とその趣旨、なにをやるかについて書き留めてみたい。
2014年に表面化したウクライナ危機を契機に、『ウクライナ・ゲート』、『ウクライナ2.0』、『プーチン露大統領とその仲間たち』、『官僚の世界史』(いずれも社会評論社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)を立て続けに上梓する機会があった。もちろん、以前から『ビジネス・エシックス』(講談社)、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『ロシアの真実』(東洋経済新報社)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(岩波書店)など、すでに10冊を超す本を出してきたが、ここ数年は自著を通じて、多くのマスメディアの関係者と出会う機会(BSフジ・プライムニュースやAbema・TVなど)があり、いろいろと考えさせられる場面に出会った。
そこで痛感したのは、日本人全体の劣化、いやもっと言えば、地球全体の人々の劣化という重大な事態である。まあ、あまり大袈裟に書いても仕方ないが、ともかく、もう少し私のほうから志のある人に働きかけないと、まずいことになるのではないかという危機感を持ちはじめた。それが、「21世紀龍馬会」発足の動機である。
なぜ「龍馬」かというと、高知大学に勤務し、一応、高知に住んでいることになっているから、多少とも地元の方々に「龍馬の時代精神」を伝えやすいと思ったからである。坂本龍馬は近代化の途上にあって、時代を先取りし、日本の近代化への道を切り拓いた人物だ。いまに置き直せば、21世紀の混沌たる世界において新たな地平を開拓するような人物ということになるだろう。私がしたいのは、龍馬の生き方をヒントにしてそれを21世紀という時代を生きている若者の生き方の参考として指し示すことだ。龍馬の生き方のインプリケーションを、21世紀を生きる人々にいかしてほしいと思ったわけだ。
1835年生まれの龍馬は父・八平の後妻・伊与の前夫の実家である川島家を訪ねては世界への見聞を広めた。あるいは、江戸遊学から土佐に戻った1854年、彼は画家河田小龍から西洋事情を学んだ。あるいは、短い間だったが佐久間象山の私塾に学んだこともある。もちろん、勝海舟との出会いが大きな影響をおよぼした。私としては、21世紀の龍馬を育てるために、河田小龍や佐久間象山のような役回りはできないかと考えているという次第である。
私自身、柄谷行人、大澤真幸という、私の研究に多大な影響をあたえてくれた人に会ったことがある(浅田彰とは電話で話したことがある。実家は本当に産婦人科医院だった)。柄谷との出会いについては、拙文が昔、岩波書店のページにアップロードされていたのだが、もう読むことはできないのだろうか。大澤との関係については拙著『ビジネス・エシックス』の「あとがき」に書いておいた。同じように、私も他者との交流の場をもったほうがいい時期にきていると思うようになっている。なにしろもう還暦を過ぎたから。
早稲田大学の大学院生が5年ほど前、私の講演後にやってきて「『パイプラインの政治経済学』が私にとってのバイブルです」と言ってくれたことがある。3年ほど前には大阪大学の大学院生が講演会場で私に質問し、なにやらいろいろと話しを聴きたそうにしていた。わざわざ私の授業を出席するために、聴講生となってやってきた人が一人だけいたが、彼と親しく話をすることはなかった。私自身、大学生時代、上智大学に聴講生として通っていたことがあることを想えば、本当はもっとこうした機会を利用して、若者にしっかりと向き合っていればよかったと反省している。
というわけで、ゆるやかな開かれた勉強会として「21世紀龍馬会」を毎月土曜日に一度だけ開催し、そこで2時間ほど話をしたいと考えている。参加者の数にもよるが、最初のうちは私が60分から90分くらい話をして、残りの時間を質疑応答にあてたいと思っている。そして、時間がある方々とともに一杯やって帰宅するという算段だ。
龍馬に倣う以上、この会で話すことは、龍馬の生き方のインプリケーションを21世紀に反映して考えるというものになる。私に会いたい人があれば、全国から来ていただいてもいっこうにかまわない。そのうち、YouTubeで内容そのものを公開してもいいとも思っているが、いつになるやら。
機会があれば、私だけでなく出口治明さんのような有名人の講義をしてもらう(この実現は100%確約しておく)。氏は30年以上も前からの友人だからだ。いまあの『週刊文春』で「0から学ぶ「日本史」講義」を連載されている。
最後にもう一つ。私としてはどうでもいいことなのだが、こうした場を設けることで、若い男女の出会いの場を提供したいと考えている。まじめにものごとを考える気持ちをもった若い男女が出会い、真摯に議論できる場があれば、きっとなにかの役に立つのではないか。そんな期待くらいないと、わざわざ私の話を聞きに来る気にはなれないかもしれないから。理由はなんであれ、龍馬の地で21世紀の龍馬にあこがれる人々を少しでも増やしていきたいと考えている。
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