大学生へのオリエンテーション

大学生へのオリエンテーション

4月12日に「世界経済論」という授業のオリエンテーションを行いました。そこで強調したのは、「世界の潮流の変化を知るために、せめてThe EconomistのTechnology Quarterlyという特集を読みなさい」ということでした。

おりしも、4月6日号にはTechnology Quarterlyが掲載されています。「合成生物学」(synthetic biology)の特集が組まれています。合成生物学は、バイオテクノロジー、遺伝子工学、分子生物学などを組み合わせた学際的な学問分野を意味しています。AIを支える「マシーンラーニング」によって「豊饒な技術」が生み出されており、これを活用して比較的短期間でさまざまな実験が可能となっている現状をうまく利用しようとしているのです。

2010年5月には、雑誌『ネーチャー』に、クレイグ・ヴェンターやハミルトン・スミスらによって実験室で「生きた生物」が創造されたことが発表されましたが、生物学はいまようやく日本で騒がれている「ゲノム」(遺伝子)編集(DNAの二本鎖を切断してゲノム配列の任意の場所を削除、置換、挿入することができる新しい遺伝子改変技術にクリスパー[Crispr]があります)にしても、合成生物学のごく一部にすぎません。合成ウィルスの脅威が世界中に広がっているのですが、その事実を知っている日本人は、たぶんほとんどいないでしょう。遺伝子組み換え生物(Genetically Modified organism, GMO)については、発光する魚や成長の速い鮭などのGMOが生まれて数年たつし、猫のような哺乳類でさえ遺伝子組み換えでつくられているのです。

こんな最先端技術の動向を知ってもなんの意味もないかもしれません。それでも、今後、どこに就職すべきかを考えているような人にとっては最先端の技術情報は、少しは役に立つはずです。

 

Wiredもお勧め

まったくの偶然かもしれませんが、Wiredという英語の雑誌でも、4月号で前述したクリスパーが特集されています。AIによって生物学が急速に進化し、IT雑誌でもクリスパーが取り上げられる時代が到来しているのです。

若いみなさんには、このWiredを読むことも勧めたいと思います。Wiredは1993年、米国でプリントマガジンとして登場しました。その記事の多くを翻訳した日本語版もあったのですが、2017年に休刊となってしまいました。英語のプリントマガジンはややハードルが高いかもしれません。

そういう人には、とにかくhttps://wired.jp/に1週間に一度はアクセスして日本版のWiredを必ず読むことを強くお勧めします。残念ながら、いまの日本のマスメディアのなかには、世界のITにかかわる情勢をビビットに教えてくれるものがありません。その意味で、このサイトは貴重です。必読のサイトであると思います。

 

歴史的位相という問題意識

たぶん、今月か来月の月刊誌『潮』に「「監視資本主義の時代」?:歴史の位相を問う」という拙稿が掲載されます。そこで私は、若い人たちに自分の立ち位置を歴史的によく認識することの必要性を説いています。

坂本龍馬は19世紀半ばの日本が置かれていた歴史的な立ち位置をよく理解していたと思います。だからこそ、姉乙女宛の手紙のなかで、「日本を今一度せんたくいたし申候事ニいたすべく」と書けたのです。わかりやすく言えば、アメリカのような国では、生まれによらず身分を超えて各人がさまざまな職業に就ける環境にあることを知っていました。そうした国づくりをしなければならないという時代の方向性に気づいていたわけです。だからこそ、龍馬は「新国家」をめざして「企て」をめぐらせ新国家樹立の「志」を実現しようとしたわけです。

同じように、21世紀を生きるみなさんは時代がどのような方向に向かおうとしているかに敏感であってほしいと思います。

結論からいえば、いま、みなさんは「サイバー空間」と「リアル空間」が融合する時代を生きてきます。それを支える最先端技術こそ、5G、AI、ブロックチェーンそしてIoTということになります。これらの最先端技術を理解し、自分たちの将来に役立ててほしいと思います。そうしたお手伝いを多少なりともできればいいと、私は考えているのです。

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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