拙著の宣伝

拙著の宣伝

 

大学の夏休みはまだまだつづきます。夏休みになって、もうすぐ1カ月を経過しますが、この間、拙著『なぜ「官僚」は腐敗するのか』(潮出版)の出版が迫ってきました。10月はじめに上梓の予定です。

すでに初稿は修正済みでしたが、中央官庁、地方自治体、裁判所による障害者雇用の水増しが発覚して、急遽、追加原稿を書くことになりました。宣伝のために、その内容をここに紹介してみましょう。

 

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おわりに

本書出版の最終局面で、障害者雇用数の水増しが中央官庁だけでなく、裁判所や地方自治体で数十年にわたって行われてきたことが発覚しました。一三〇〇年以上つづく官僚制の弛みが露見したことになります。「官」が法律を踏みにじっても罰せられず、「民」にだけ厳しい罰金を科すという「官尊民卑」がつづいてきたことにあきれるばかりです。まさに、官僚は腐敗しつづけてきたわけです。

本書で指摘したように、日本には「公共的」と訳されている「パブリック」なものがありません。「公」である「国にお任せ」という長い歴史が官僚による法律無視という事態を招いているのです。「おかみ」である「公」は「神」であり、「上」である以上、「法の上に立つ」と思い込んでいるわけです。だからこそ、平然と嘘をつき、法律を無視できるのです。

 

安倍首相の矛盾

不可思議に思うのは、このところずっと安倍晋三首相が「法の支配」(rule of law)の重要性を説いてきたことと、法を無視しつづけてきた官僚との関係についてです。安倍は二〇一四年十月、国際法曹協会(IBA)が東京で開催した年次大会に招かれ、その場で「法の支配」について演説したことが知られています。そこで、「法の支配」は西洋を起源とする用語だが、アジアでも同様の考えがあるとし、吉田松陰や聖徳太子の「十七条憲法」を持ち出しただけでなく、「法と正義の支配する国際社会を守ることが、日本の国益」であり、法の支配の実現に向け外交を展開する、とまでのべました。安倍は「法の支配」の考え方は普遍的だとし、「人類愛によって結ばれ、助け合う人間が、合意によって作っていく社会の道徳や規範。それが法です」と演説したのです。

しかし、この理解はまったく間違っています。法は道徳や規範よりもずっと狭い領域にしかかかわっていないからです。さらに、法の支配と言いながら、官僚が法律を破ってきた日本の現実に、安倍はなにを思うのでしょうか。遵法という官僚にとって必要最低限の義務さえ守れず、公文書改竄をしても罪にも問われない、いまの日本の官僚制のもとで、安倍は法の支配を説きつづけるのでしょうか。

 

「国家を信じるな」

わたしは授業のなかで、「国家を信じるな」と教えてきました。したがって、今回の不祥事についてまったく驚きませんでした。日本の官僚の本性を示す動かぬ証拠が明らかにされたのだと思っています。日本の場合、国民だけでなく官僚自身が「おかみ」意識に毒されています。そのため、政治家がつくる法を心の奥底では小バカにしているのです。おまけに、政治家はそうした実態を知ってか知らずか、平然と「法の支配」を説く。これでは政治家が官僚の脱法行為を暗黙のうちに認めているかのように感じられます。こんな官僚や政治家が国家を主導している以上、「国家を信じろ」と教えるのは難しいのです。

きわめて残念なのは、今回の不祥事に対するテレビの報道ぶりです。国のいい加減さを糾弾し、しっかりした対策を講じるための議論が必要であるにもかかわらず、まともな報道がほとんどありません。これでは、国家の暴走に歯止めをかけるチャンスをいかせないのではないかと心配になります。公共機関たるマスメディアが本来の役割を果たせていないことも日本の悪しき特徴なのです。

そろそろ、坂本龍馬が姉乙女(おとめ)宛の手紙のなかで書いたつぎの言葉を本当に実現させなければならないのかもしれません。「日本(ニツポン)を今一度せん((洗)たく(濯))いたし申候事ニいたすべく」というのがそれです。

わたしは二〇一七年四月に「二一世紀龍馬会」(http://www.21cryomakai.com)を創設し、代表を務めています。「ニッポンの洗濯」をするために、「二一世紀龍馬」を育てようとしているのです。こんな試みがあることに関心をもってもらえれば、幸甚に思います。一歩一歩前に進むしかありません。

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法律さえ守らない公務員と、それを糾弾しない政治家が日本という国を支配しています。こんなお粗末な状況にあるのです。

本当に「ニッポンの洗濯」が必要だと思います。そのためには、まず、安倍晋三を政治家から引き摺り下ろすことが不可欠だと思います。わたしは別の拙稿でつぎのように書いておきました。こちらもじっくりとお読みいただければ幸いです。

 

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ディスオネスト安倍と国家

安倍晋三首相は海外メディアから「ディスオネスト・アベ」(Dishonest Abe)と揶揄されている。不誠実・不正直で信用おけない人物とみているのである。つまり、国家の顔がまったく信用されていない。

歴史的にロシアで発達した概念に「デズインフォルマーツィヤ」というものがある。これを英訳したのが「ディスインフォメーション」(disinformation)ということになる。「意図的で不正確な情報」を意味している。故意に不正確な情報を流して、混乱させて自分に有利な状況をつくり出そうという情報工作だ。安倍は自らこのディスインフォメーションを国会の場で幾度も繰り出してきた。加計・森友学園問題に絡んで、安倍だけでなく財務官僚もまた国会で何度も虚偽答弁を繰り返してきた。国家の意思決定の場で、こうした事態が進行しているのもかかわらず、自民党の国会議員のなかから、安倍を「裸の王様」だと厳しく断罪する者も現れない。

**君よ。こんな状況のなかで国家を信じることができるだろうか。ぼくが気がかりなのは、安倍のディスオネストな姿勢が「信頼」を損ねている点だ。それは、ビジネスの世界にも悪影響を着実におよぼしている。

ぼくのあまり好きではない言葉に「ヒューマン・キャピタル」(Human Capital、人的資本)という言葉がある。人間を資本のようにみなすこの考え方には違和感をもつからだ。それでも、この考え方の基礎には、人間同士が信頼によって支えられたところに密接なネットワークが構築され、それがビジネスの発展につながるという見方がある。この主張からみれば、ディスオネスト安倍のやっていることは人的資本を壊すことであり、それは日本のビジネス界に大打撃を与えている。

ディスインフォメーションは人間同士の信頼関係にひびを入れ、相互に疑心暗鬼にさせて混乱を醸成するという「効果」がある。だからこそ、厳しい競争にさらされている民間会社にあっては、他社に対してはディスインフォメーションを攻撃的に利用し、自社においてはディスインフォメーションから身を守るという戦術がますます拡大しようとしているのだ。ディスオネスト安倍ばかりか、決裁済みの公文書を改竄しても罪に問われない財務官僚が跋扈している以上、こうした人々と同じように嘘や不正確な情報を意図的に流して敵を混乱させながら自らの利益につなげるというやり口が広まりかねないのだ。これは、日本のビジネス世界にとってマイナスだ。せっかくつくり上げてきた信頼関係が壊れつつあるからだ。

ディスオネスト安倍は明らかに日本国全体の信頼関係を壊した。それどころか、いまでも壊しつづけている。このモンスターのような人物を庇おうとする者がいるかぎり、信頼関係はますます毀損されることだろ。こんな状況にあるからこそ、ますます「国家を信じるな」と若者に向けて強調しておきたいのだ。

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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