ロシア研究から見えてくる日本の不幸

ロシア研究から見えてくる日本の不幸

塩原俊彦

 

しばらく風邪で体調を崩していました。このところ、「旧ソ連地域の「移行経済」問題の再検討」という論文に取り組んでいます。といってもまだ完成したわけではありません。

 

政治システムが機能しないと、民主主義が十分に機能せず、結果として経済システムも毀損されてしまうことは、Daron Acemoglu and James A. Robinson, Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty (Great Britain, Profile Books, 2012)=『国家はなぜ衰退するのか――権力・繁栄・貧困の起源』鬼澤忍訳、(早川書房、2013年)を読めばよくわかります。

 

マスクスが考えたように「土台」としての「経済」も大切ですが、より重要なのは「政治」であるように思います。このとき、とくに「安全保障」にかかわる政治分野が重要であるというのがわたしの見立てです。

 

なにを言いたいかというと、警察、検察、司法といった権力執行機関の重要性です。佐川の財務文書改竄を起訴しないという検察の判断は間違っています。権力に対峙し、これと闘うことでしか、民主主義は守られません。「権利は主張することによってのみ守られる」という金言がありますが、民主主義も権力と対峙することによってのみ守られるのです。

 

ロシア革命後のロシアを安全保障面から研究してみると、「腐敗闘争」の重要性がわかります。最近で言えば、中国の習近平が反腐敗闘争を自らの権力基盤強化に利用したのは明らかですが、ロシアではアンドロポフがこれをうまくやりました。後期スターリン期から急速に広がるようになったソ連国内の腐敗はそれに目を瞑ったブレジネフ時代に跋扈するに至ります。こうした現状を調べ上げ、ソ連共産党改革を旗印にして権力基盤を固めようとしたのがアンドロポフでした。かれは道半ばで死去してしまいますが、この路線を踏襲したのがゴルバチョフであったわけです。

 

ソ連時代の腐敗は、収容所や刑務所で仲良くなった連中が組織犯罪グループを形成すると同時に、私服を肥やしたり、出世に利用したりするために党幹部がそうしたグループと共謀関係を結び、腐敗ネットワークを構築するという特徴をもっていました。前者は「掟のなかの犯罪者」と呼ばれていたのですが、その「掟」が「法律」に置き換わり、犯罪者が党幹部や公務員になる道まで拓かれるようになります。他方で、既存の党幹部らは自ら犯罪を犯すようになるのです。

 

こうした事態を放置したり、権力基盤強化に利用したりすると、大きなしっぺ返しを受けかねません。つまり、権力執行機関たる合法的暴力装置まで腐敗し、それが国家の屋台までも腐らせてしまうことになるのです。

 

おおざっぱに言えば、ブレジネフが「掟のなかの犯罪者」を中心とする犯罪組織の拡大を放置し、アンドロポフがそうした犯罪組織を権力奪取に利用し、ゴルバチョフが移行経済化によって「掟のなかの犯罪者」の政治家化や政治家・官僚の「掟のなかの犯罪者」化への道を切り拓き、エリツィンがそうした盗人支配の拡大を促し、プーチンがそれを完成させようとしている――というのがいまのロシアです。

 

日本には、「ヤクザ」と呼ばれる組織犯罪グループがあります。「掟のなかの犯罪者」と「ヤクザ」は類似性があるかもしれません。そうであるならば、日本の安全保障と政治はどう関係しているのでしょうか。

 

簡単に言ってしまえば、安倍晋三によって日本も民主主義が崩壊に向かっています。日本の「ヤクザ」は脆弱傾向にあるかもしれませんが、さまざまなかたちで国際化を進めています。サイバー攻撃の「先進国」はいまでもロシアですから、「掟のなかの犯罪者」グループとの関係強化で持ち直そうとしているように見えます。加えて、Dishonest Abeは嘘八百を並べ立てて、ロシアの腐敗ネットワークの中心にいるプーチンと仲良くすることで、善悪を超えた悪辣きわまりない外交を平然と展開しています。

 

国内では、上目遣いで出世を目論む官僚が検察にも跋扈し、国民の権利を守るということの意味をまったく理解していません。政治家の多くは世襲化によって、政治をビジネスとすることで、目の前のカネにしか関心を寄せず、Dishonest Abeをまともに批判できる与党議員はだれもいないように見えます。つまり、民主主義が機能不全に陥りつつあります。

 

アンドロポフはマスメディアを情報操作に活用することに大変に長けていました。有名なのは『文学新聞』の編集長を使ったディスコミュニケーションです。1983年に、KBGがスポンサーを務めているインドの新聞、The Patriotは、米軍がAIDSウィルスをつくったと批判し、それを武器としてばら撒いているという物語を報道しました。この話はソ連の支配したマイナーな系列販売店で売られる程度の代物でしたが、ゴルバチョフ書記長が誕生した1985年になってソ連の週刊新聞、『文学新聞』によって取り上げらます。その結果、1987年だけでソ連の支配する新聞40回以上現れ、30の言語で80カ国強において再印刷されたり、再放送されたりするまでに至ります。このとき米国政府はクレムリンやゴルバチョフにソ連がこの話を広げるのをやめるように大きな圧力をかけたと言われています。このときの『文学新聞』の編集長はフョードル・ブルラツキーで、KGB議長だったアンドロポフが抜擢した人物です。アンドロポフはマスメディアを利用してディスインフォメーションを流布する工作の重要性に早くから気づいており、その延長線上にゴルバチョフもあったとみることができます。

 

これをDishonest Abeに当てはめると、かれは読売新聞や産経新聞を活用して、ディスインフォメーションによる工作活動を行うとともに、NHK、フジテレビ、日本テレビなどを露骨に懐柔しようとしています。いまのところ、自らの腐敗を糺せないことで、首相の座をなんとか守ろうとしているだけですから、まだ安心ですが、このまま放置していると、今度は腐敗闘争を自らの権力基盤強化に利用しかねません。

 

Dishonest Abeは即時退陣すべきであり、そうしなければ、日本全体が腐ってしまいます。「魚は頭から腐る」というのはロシアのことわざですが、その通りです。ロシアと日本の比較をこれからもつづけることで、Dishonest Abeの正体を暴きつづけたいと思います。

 

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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