『トランプ革命』を書き終えて

ようやく『トランプ革命』を書き終えた。これからは、拙稿の微調整と校正をしなければならない。そんなとき、森永卓郎著『発言禁止 誰も書かなかったメディアの闇』を読む機会があった。とてもいい本なので、ぜひ読んでほしい。

わかってほしいのは、テレビや新聞に登場する大多数の人間が不誠実で、品格に欠ける「ろくでなし」であるということである。私の拙稿では、第五章でつぎのように書いておいた。

「その昔、不思議に思ったことがある。それは、旧石器遺跡捏造事件に関連している。2000年10月5日付毎日新聞の朝刊がスクープしたこの事件は、藤村新一という、特定非営利活動法人・東北旧石器文化研究所の副理事長が遺跡に石器を埋め込むことで、石器のあった年代をどんどん古くまで遡らせ、旧来の学説をなんども塗り替えてきたことを暴露したものだった。藤村の「発見」と、それを信じた学者やオールドメディア、それに官僚は「世論」を誘導し、数多くの教科書の記述の変更がなされるまでに至る。だが、藤村の捏造が暴露された後になっても、その罪は問われることもないままに終止した。彼の捏造で直接・間接に利益を受けた官僚やオールドメディアの人々もまた犯罪に問われることもなかった。嘘を見抜けず、その嘘を国家権力が教科書を通じて拡散させたにもかかわらず、国家権力自体もまたなんの責任もとらなかったということになる。

 学問上の誤りは少なくとも「刑事裁判にはならない」のだと強く印象づけられた。そういえば、小保方晴子をめぐるスキャンダルにしても、胞子様細細胞・刺激惹起性多能性獲得細胞(STAP細胞)の存在をめぐる不正な研究であったにしても、その責任追及は刑事事件にまで至ったわけではない。不幸にも、笹井芳樹という理化学研究所の幹部職員が自殺したが、小保方への責任追及はウヤムヤだった気がする。

 こうした状況から、私にはいい加減な学者が増えているように思えて仕方ない。鮮血が飛び散るような勉強もしないまま、英語やロシア語といった外国語で書かれた文献を日本語に翻訳するだけのスカスカの研究をしておきながら、自分の意見として皮相な意見をのべる学者や研究者が多すぎるのだ。その結果、彼らが間違えても、責任追及はほとんどなされないから、あとは日本政府の意向やオールドメディアからの注文にあわせて駄弁を弄していればすむことになる。」

実は、こうした無責任きわまりない輩がテレビや新聞に登場し、国民をだましてきたし、いまでも、だましつづけている。

私が万死に値する「ろくでなし」と思っているのは、米大西洋評議会シニアフェローのアンダース・アスルンド(オスルンド)である。彼はIMFの対ロ市場経済化策を支持・推進し、巨額の資金のロシアからの流出を招いた事態を経済政策で支えていた人々の一人である。そんな彼は、ウクライナ戦争勃発後、2023年1月4日に、この論考のタイトルにした「ポスト・ソヴィエト研究の終焉?」という題の意見を「キエフ・ポスト」において公表した。彼は「ロシアのウクライナに対する侵略戦争の後では、スラブ・東欧・ユーラシア研究協会(ASEEES)が代表するような地域研究を正当化することはもはや困難である。ウクライナの学者たちは、ロシア帝国の学者たちと同じ部屋にいることにさえ同意しないだろう」とのべ、これまでの研究のあり方への猛省を訴えている。「ロシアの対ウクライナ戦争は、旧ソ連支配地域を研究する伝統的なロシア中心主義の西側アプローチを否定することにつながった」というのである。

人間というのは、罪に問われなければ、どこまでも罪を犯しつづけられるのか。私からみると、彼は、いわば米国政府べったりの「御用学者」にすぎない。リベラルな覇権主義を前提に、すべての「悪」をロシアに帰したうえで、これまでの研究のあり方を改変せよ、といまでも主張している。彼の間違った主張によって、何人のロシア人が路頭に迷ったかさえ考えないのか。

そんな彼だからこそ、この記事の最後の段落で本性を現す記述をしている。

「プーチン政権が崩壊し、ロシアがEUの候補となり、昔、故マーティン・マリアが主張したように、ロシア学がヨーロッパ学の一部となる可能性があるまで、ロシアは独自に活動することになる。親ロシア派の主要な資金提供者である二者がどのように行動するかは、まだわからない。カーネギー・コーポレーション・オブ・ニューヨークとコーク財団である。」

この文章からわかるように、実は、アスルンドは資金の出どころによって研究そのものが大きく歪められてしまうことをよく知っている。そうであるならば、自分自身を含めて、カネによって歪められている学問の実態そのものをなぜ批判しないのだろうか。

ここでの記述は、私の新しい本向けに書いた一部だ。

 

パトリック・ハーランの不誠実

同じように、不誠実きわまりないのがパトリック・ハーランという芸人だろう。米民主党の悪辣さについて語らないまま、トランプや米共和党の批判ばかりしている輩だ。単に、日本語が話せる米国人だが、他方で、CMにも登場している。こんな不誠実な人間にコメントさせることで、バイデン政権が「善」であるかのような誤解を日本中にばら撒いてきた。こんな輩を登場させるくらいなら、ジェイソン・モーガンにより信憑性の高い話をさせるべきだろう。

成田悠輔という輩も、最近、テレビに登場しているらしい。変なメガネをかけている人だ。私は、彼の『22世紀の民主主義』を読んだことがある。感想は「不勉強」という一語につきる。私からみると、学問を「ちょうろい」と思っているような軽薄なことしか書いていない。とくに、政治哲学的分析が不足している。あるいは、民主主義と社会心理のような問題に対する関心がなさすぎる。いわゆるwoke問題への問題関心も薄い。はっきり言えば、読むに値しない。

こんな本を20万人が読んでいるのかと思うと、もう日本は終わりだろう。そんな時間があるなら、もうすぐ刊行される拙著を熟読してほしい。本のレベルに雲泥の差があることは、だれでも実感できるはずだ。

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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