講演会のお知らせ:2月2日杉並区の梅里区民集会所にて

2025年1月26日に授賞式が催される2024年度「岡倉天心記念賞」の受賞を受けて、これまでウクライナ戦争についてあまり知らなかった方々向けに講演会を開くことになりました。この賞は、『ウクライナ3.0』をはじめとするウクライナ関連著作に対していただくものなので、これまで書いてきた『復讐としてのウクライナ戦争』、『ウクライナ戦争をどうみるか』、『知られざる地政学』〈上下巻〉、『帝国主義アメリカの野望』を踏まえた解説をしたいと考えています。

 

教育の重要性

いま、強く感じているのは教育の大切さです。私のみるところ、優れた教員が大学や大学院にいないために、いまの研究者のレベルはきわめて低いと言わざるをえません。これは、日本だけの現象ではないようです。英語で読むロシア関連の論文や記事をみても、程度が相当に低いと思います。

まず、過去の先行業績の収集が疎かになっています。さらに、先行業績への敬意が足りません。その結果、分析結果としての論文や記事の内容が皮相で、ときとして間違いであったりします。

 

「国防発注」の重要性

たとえば、「国防発注」と書いても、この重要性を知る日本人研究者は田畑伸一郎と私くらいしかいないのではないかと思います。海外で言えば、ジュリアン・クーパーだけかもしれません。

その結果、2022年秋以降のロシアの戦時経済体制を支えている国防発注体制の重要性に言及しないまま、いまのロシア経済について考察する論文ばかりが目につきます。これでは、ロシア経済の現実を語ることにはなりません。

どうにも、愚かな教員しかいないように思えます。こんな状況を改めないかぎり、日本のロシア研究はもうまったく沈没してしまうことでしょう。

私は、ロシア科学アカデミー付属の中央数理経済研究所主宰の学術誌『現代ロシアの経済学』の編集委員を務めることで、多少なりとも、日本のロシア研究に国際的に貢献できたと考えています。しかし、いまの日本の現状をみると、もうそんなレベルに達する研究者は出てこないのではないかと危惧しています。

 

インフレ率上昇をどう分析するか

この懸念は、ロシアの最近のインフレ率上昇に対する、安易な考察にもつながっています。12月20日のBS TBSでは、ロシアのインフレが激化し、金利上昇で経済的困難な状況にあると、堤伸輔なるコメンテーターや服部倫卓北大教授、駒木明義朝日新聞論説委員がこぞって駄弁を吐いていました。

残念ながら、彼らは経済学を知らないと指摘しなければなりません。何が言いたいかというと、ロシアでもトルコでも、あるいは発展途上国でも、それぞれの国は各国通貨と外貨(とくにドル)の二重通貨制とも呼べる状況下にあるという大前提に立たなければならないからです。そうした国では、自国通貨でみたインフレ率がいくら高くなっても、その国に流通する外貨にシフトすれば、名目上のインフレ上昇にある程度対抗できる。あるいは、外貨シフトが急速に進めば、自国通貨でみたインフレ率は加速化するのです。

こうした視角に立って、日本やアメリカのインフレ率が急上昇した現象と同じ視線で、ロシアのインフレ率上昇を分析してはならないのです。分析の前に、国内における外貨(とくにドル)の浸透度合いについてよく考察しなければならないからです。2014年から、ロシア政府は「脱ドル化」をはかっていますから、今回のインフレでは、外貨にルーブルが流れているというよりも、ルーブル建て預金の急増に注目することが必要になります。まあ、この点については、私の連載や「現代ビジネス」において書こうと思っています。

 

講演で話す内容について

こんな調子なので、まだ講演で話す内容を決めたわけではありません。いま不思議に思っているのは、どうしてこんなにバカばかりが増えてしまったかという問題です。以前から、バカばかりであったという感覚をもっていますが、そんなバカがテレビや雑誌で自分のバカさ加減を披歴するようなことは概して少なかった印象があります。

ところが、いまは「テレビや新聞に登場する人物=バカ」といった公式が成立するように思われます。その結果、「バカによるバカの再生産」が広がっています。この悪しき再生産を断ち切るためにはどうすべきか。そんなことも考えています。

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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