ゼレンスキーという「悪」:だまされてはならない

ゼレンスキーの国連総会演説には、看過できないたくさんの発言がある。拙著『プーチン3.0』や『ウクライナ3.0』、『復讐としてのウクライナ戦争』で何度も指摘したように、プーチンが「悪人」であることはだれでも知っているが、侵略を受けた側のゼレンスキーが「善人」ということには決してならない。

どちらも「悪」であり、ゼレンスキーの発言にはたくさんの「嘘」が散りばめられている。こんな「悪人」の言い分をそのまま受け入れてはならない。もっと頭のなかでよく考えて、この男の偽善に気づいてほしい。

 

「悪は信用できない」

ゼレンスキーは、“Evil cannot be trusted – ask Prigozhin if one bets on Putin’s promises”( 悪は信用できない。プーチンの約束に賭けるかどうかは、プリゴジンに聞いてほしい)とのべた。どうやら自分は「悪」ではないと思っているようだ。

ゼレンスキーは米国政府の指導部に命じられるまま、2014年以降、懸案とされてきたドンバス和平を先送りしてきた。和平を実現するといって大統領に選出されたにもかかわらずに、彼は国民の負託を無視した。このウクライナの武装強化によるドンバス、クリミアの奪還を計画する好戦的グループこそ、「時間稼ぎ」による対ロ戦争勃発を煽動してきたのだ。これを明らかにしたのがドイツのメルケル前首相だ。

その意味で、ゼレンスキーは「悪人」である。ゆえに、ゼレンスキーは信用できない。彼が数々の嘘をついてきたことは前述した本以外にも、『ウクライナ戦争をどうみるか』でも具体例をあげて説明した。

 

米国の傀儡=ゼレンスキーの醜さ

はっきりいえば、ゼレンスキーは米国政府指導部の傀儡であり、信用できない。その証拠は彼の国連演説のなかによく現れている。

彼は、“The aggressor is weaponizing many other things and those things are used not only against our country but against all of yours as well”(侵略者は他の多くのものを武器化しており、それらは私たちの国だけでなく、あなた方の国すべてに対しても使われている)とのべ、三つの例をあげた。

第一は、食料だ。「黒海とアゾフ海のウクライナの港はロシアによって封鎖されている」ことを理由にして、ロシアによるウクライナ産穀物輸出への妨害が「武器化」にあたると主張している。まず、片腹痛いのは、港湾封鎖はロシアだけの仕業ではないことだ。ウクライナ側もまた機雷を敷設して、船舶の往来を邪魔している。

もっと重大なのは、食料を長く「武器」にしてきたのは米国政府であることだ。食料支援を材料にして、支援国に遺伝子組み換え作物を栽培するよう奨励するといっためちゃくちゃなやり方で、食料を「武器」にしてきたのだ。詳しくは、拙著『知られざる地政学』〈下巻〉に書いておいたから、ぜひとも読んでほしい。

 

エネルギーの武器化もまた米国の常套手段

ゼレンスキーが第二にあげたのは、エネルギーである。“Russia is weaponizing nuclear energy”(ロシアは核エネルギーを武器化している)とゼレンスキーは指摘した。しかし、核エネルギーもまた、最初に武器化したのは米国であり、核兵器を、核潜水艦に転用し、それが陸上で核発電所となり、それを世界中にばらまくことでエネルギーを武器化したのだ。だが、この政策は失敗し、ソ連およびその後継のロシアに核エネルギー産業が牛耳られてしまっている。それだけのことだ。

この問題については、『知られざる地政学』の上巻でも下巻でも詳細に論じておいた。

ゼレンスキーは目先のロシアによるエネルギーの武器化だけを問題にし、米国によって70年以上つづくエネルギーの武器化については黙して語らない。まさに、ゼレンスキーが米国政府の傀儡だと主張したくなる根拠の一つだ。

 

なぜ戦争を止めないのか

第三に、ゼレンスキーは子どもの武器化を問題視した。「残念なことに、さまざまなテロリスト集団が、家族や社会に圧力をかけるために子どもたちを誘拐する」と彼はいったが、それならばなぜ一刻も早く戦争を停止しないのかと問いたい。自分が権力を失うことになっても、一刻も早く戦争を止めて、子どもの将来に少しでもいいから明るい展望を示さないのか。

だれにでもわかることがある。それは、いくら欧米諸国がウクライナに武器供与しても、ウクライナ戦争が終結することはないということだ。最悪の事態はクリミア争奪をめぐって、ロシアが核兵器を使うことだろう。

そもそも欧米諸国がウクライナ支援をつづける行為そのものがおかしい。一刻も早く、戦争をともかく無条件で停止しなければならない。ウクライナとロシアの双方に妥協を迫ればいいだけだ。どちらも「悪」であり、妥協できないはずはないのだ。ゼレンスキーは侵略された側が絶対的に正しいと思っているようだが、それは間違いだ。その意味で、ゼレンスキーの「悪」を厳しく指摘し、糾弾しなければならない。

 

岸田首相は「愚か者」

ついでに、岸田文雄首相が「愚か者」であるこという話も書いておきたい。岸田は、国連総会での演説で、「今も、安保理常任理事国ロシアが国際法、「法の支配」を蹂躙しています。力または威圧による一方的な現状変更は、世界のどこであれ、認められません」とのべた。

しかし、なぜ岸田はウクライナが「法の支配」を蹂躙している事実について指摘しないのか。この事実については、独立言論フォーラムで連載中の「知られざる地政学」連載第4回で論じている。来週には公開されるだろう。タイトルは、「ウクライナ政府のなかにテロ組織:核発電所攻撃もねらう!?」だ。

日本政府もまた米国政府の「下僕」に成り下がっているから、「現実」を注視している者であれば、だれでも知っている事実について無視を決め込んでいる。こんな「愚か者」が日本の外交を担っている恐ろしさに気づいてほしい。

世襲議員で勉強の足りない岸田は、覇権国アメリカの実像を知らないように思える。『知られざる地政学』〈上下巻〉を読解できるだけの能力があるかどうか知らないが、この本をよく読んで、日本の外交を根本から見直してほしい。まあ、無理だろうが。

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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