バカなマスコミ、バカな政治家、バカな学者:イーロン・マスクの「ヌーランドほどこの戦争を強引におし進めている人はいない」というつぶやきをめぐって

2023年2月23日、独立言論フォーラムに拙稿「ウクライナ戦争を煽る米国務省次官ヌーランド:イーロン・マスク氏のつぶやきを知れ!」を送っておいた。いつ公表されるかわからないが、この原稿を書きつつ感じたことを書いておきたい。

 

バカなマスコミ

2013年から2014年に起きた「ウクライナ危機」と呼ばれる出来事について、欧米諸国や日本の主要マスメディアは無視を決め込んでいるようにみえる。それでは、イーロン・マスクが「ヌーランドほどこの戦争を強引におし進めている人はいない」とつぶやいた真意を理解することは決してできないだろう。

ヴィクトリア・ヌーランドは2013年当時、米国務省次官補として、親ロシア派と彼女が勝手に決めつけたヴィクトル・ヤヌコヴィッチを追い落とすためにウクライナ西部でくすぶっていた若者をナショナリストに仕立て上げ、武装訓練まで施して、クーデターを引き起こした。だが、ナショナリストのなかには、ロシア系住民に暴力をふるう者もいた。その結果、ウラジーミル・プーチン大統領による介入を招く。ロシア系住民の保護を名目に、軍港のあるクリミアにおいて、住民投票が実施され、ロシア併合につながってしまうのだ。それだけではない。ウクライナ東部のドネツクとルガンスクにおいて紛争が起き、いわゆるドンバス紛争が継続されることになってしまったのである。

こうした混乱を招いた責任の一端は明らかにヌーランドにあった。彼女自身は、この失態でプーチンに恨みをもち、復讐心に燃えたに違いない。そんな彼女が、かつての上司、ジョー・バイデン(当時、副大統領としてウクライナを担当)が2021年1月、大統領に就任すると、5月に国務省次官として復活する。すると、すぐにウォロディミル・ゼレンスキー大統領はクリミア奪還を公然と訴えるようになる。それだけではない。ロシアを挑発して戦争に巻き込むための準備を本格化させることになるのだ。

ドイツのアンゲラ・メルケルが2022年12月7日、ドイツの『ツァイト』誌に掲載されたインタビュー(https://www.zeit.de/2022/51/angela-merkel-russland-fluechtlingskrise-bundeskanzler/komplettansicht)のなかで、「2014年のミンスク合意は、ウクライナに時間を与えるための試みだった。また、ウクライナはより強くなるためにその時間を利用した」とのべた背景には、米国政府がウクライナのナショナリストを温存しつづけ、将来、クリミアおよびドンバスを取り戻すための準備を継続するねらいがあったと示唆したい想いがあった。事実、ヤヌコヴィッチを追い落とした後に生まれたペトロ・ポロシェンコ大統領になっても、クーデターにかかわり、複数の人々を殺害したナショナリストは処罰されることなく生き残った。いわば、米国政府が彼らをかばいつづけ、時期をみて利用しようとしたのである。

その典型例が2019年10月のデモであった。ミンスク合意の実現に向けた進展に反対するデモがウクライナ全土に起き、ゼレンスキー大統領によるドンバス和平実現への動きを封じ込めることに成功したのである。このデモこそ、米国政府に守られてきた過激なナショナリストによる示威活動であったのだ。

こうしたウクライナの「哀しい歴史」を知らないまま、日欧米の主要メディアは米国政府べったりの報道に明け暮れている。こうしたバカが世界を第三次世界大戦へと導いているように、私にはみえる。

 

バカな政治家

米国の政治家は品性下劣なカネの亡者ばかりにみえる。欧州の政治家はもう少しまともかと思ってきたが、メルケル引退後、誠実な政治家はもういなくなってしまったようにみえる。どうしようもなく下劣であったボリス・ジョンソンがいなくなっても、バカばかりが勝手な政治判断をしている。ウクライナ戦争を即時停戦しろというような、きわめて真っ当な発言さえだれもできない。

空いた口がふさがらないのは、死亡者の人数を平然と間違えておきながら、何の反省もしない欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長のバカさ加減だ。彼女は2022年11月30日、「2万人以上の民間人と10万人のウクライナ兵士が死亡した」と語った。こうツイートしたあとに、この発言はなかったことにされたのだが、こんなバカな間違いを犯す政治家がEUのトップについているのである。しかも、この大失態を批判するマスメディアがほとんどなかったのだ。政治家がバカなら、マスコミも大バカということになる。

日本の政治家も同じである。戦時下にあっても、腐敗が蔓延しているウクライナに税金を投じて支援するのであれば、支援が真っ当に使われるかを監視するのが当然だろう。ところが、そんな議論さえ日本では聞こえてこない。ましてや、米国政府の幹部、ヌーランドのような人物による「リベラルな覇権主義者」に対する批判の声もない。ただただ米国に盲従しているだけで、日本国民の生命・財産を守るといった気概をもった政治家はまったく見当たらない。

 

バカな学者

すでにこのサイトで紹介したように、ウクライナ問題についてまったく不勉強でありながら、『ウクライナ戦争に向き合う』といった本を刊行する井上達夫のような学者がいる。ウクライナ危機に際して、その本質がヌーランド主導のクーデターにあったことをまったく無視していた輩がウクライナ戦争について解説している。「おいおい」である。こんなバカな学者の解説など、まったく間違っているのだ。

他方で、ウクライナについて本も書いたことのないような連中がくだらないことをほざいている。ソ連時代の本質について知らないまま、ソ連傘下のウクライナについても知っているかのようなバカばかりが目立つ。

私はもうすぐ「独立言論フォーラム」において、「ロシアの権力構造からみたウクライナ戦争:軍を監視する「チェーカー」の限界」という拙稿を公表する予定だ。これを読んでもらえば、ロシアの権力構造を理解してもらえるだろう。

私は、どうしてこうもバカばかりなのだろうとつくづくと慨嘆する毎日だ。おそらく、バカによるバカの再生産を通じて、日本だけでなく世界が第三次世界大戦になってゆくのではないかと、いま真剣に危惧している。

 

 

 

 

 

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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