日本経済新聞の二人の編集委員は訂正・謝罪せよ

2月2日午後5時に公開された「論座」の拙稿「ウクライナで「ドローン戦争」か?:陸上戦に自信 をもつウクライナ・米国」(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2022013100002.html)のなかで、つぎのような注をつけておきました。

 

「( 注 ) こ こ で 、 日 本 経 済 新 聞 の 2 人 の 編 集 委 員 に 訂 正 要 求 を し て お き た い 。 2 0 2 2 年 2 月 1 日 付 の 日 本 経 済 新 聞 に 飯 野 克 彦 編 集 委 員 の 「 東 欧 で 高 ま る ロ シ ア へ の 警 戒 感 対 中 外 交 に も 及 ぶ 影 響 」 な る 記 事 が 掲 載 さ れ て い る 。 こ の 最 後 の 段 落 に 、 「 0 8 年 の 夏 の 北 京 五 輪 が 開 幕 し た 日 、 ロ シ ア は ジ ョ ー ジ ア に 対 す る 軍 事 作 戦 に 踏 み 切 っ た 」 と 書 か れ て い る 。 こ れ は 、 ま っ た く の 間 違 い で あ る 。 さ ら に 、 2 日 付 の 中 沢 克 二 編 集 委 員 は 「 五 輪 休 戦 は 空 文 、 中 ロ が 操 る 台 湾 と ウ ク ラ イ ナ の 連 環 」 は 冒 頭 で 、 「 ロ シ ア か ら プ ー チ ン が 出 席 し た 晴 れ が ま し い 北 京 の 国 家 体 育 場 ( 通 称 ・ 鳥 の 巣 ) で の 五 輪 開 幕 式 の ま さ に そ の 日 、 ロ シ ア 軍 が 戦 闘 を 開 始 ― ― 。 」 と 書 い て い る 。 こ れ も 真 っ 赤 な 嘘 だ 。 2 人 の 編 集 委 員 は 、 欧 州 連 合 理 事 会 が 2 0 0 8 年 1 2 月 に 設 置 し た 「 グ ル ジ ア 紛 争 に 関 す る 独 立 国 際 事 実 調 査 団 」 の 報 告 書 に 、 「 作 戦 は グ ル ジ ア の 大 規 模 な 砲 撃 で 始 ま っ た 」 と 明 確 に 記 述 さ れ て い る こ と を ご 存 じ か 。 7 0 0 ペ ー ジ を 超 す 長 大 な 報 告 書 に お い て グ ル ジ ア ( 当 時 ) が は じ め た 戦 争 で あ る こ と は 歴 史 上 の 事 実 と し て 認 定 さ れ て い る 。 2 人 の 編 集 委 員 が こ ん な 嘘 を 公 然 と 報 道 し た こ と に 抗 議 し て お き た い 。 訂 正 を 出 す だ け で な く 、 「 ロ シ ア 悪 し 」 で 凝 り 固 ま っ た 「 偏 見 」 を 謝 罪 す べ き で あ ろ う 。 何 も し な け れ ば 、 事 実 を 報 道 で き な い 日 本 経 済 新 聞 は そ の 信 頼 を 失 墜 す る こ と に な る だ ろ う 。」

 

日本経済新聞で記者をしていたこともあるわたしからみると、この誤りは編集委員の無能だけでなく、校閲記者の無知、デスクのマヌケさを物語っているように思えます。本当に情けないかぎりですね。

だれでも間違いはあります。ゆえに、それを糺すことは決して恥ずかしいことではありません。問題は、「過ちを改めざる、これを過ちという」という論語を理解しているかどうかですね。あるいは、「過ちを改むるに憚ることなかれ」を実践できるかどうかですね。いま現在、日経は「訂正・おわび」をしていません。本当に情けない新聞社ですね。

じつは、わたしは最初の飯野の記事に対して、インターネット経由で「訂正要求」を送信していました。ところが、それに対する対応はまったくありません。このとき、きちんと対応してくれていれば、中沢の同じ間違いを防ぐことができたと思います。その意味では、読者対応についても、体制を改める必要があるでしょう。

 

北京五輪で同じ間違いが出ないか、心配

この件から明らかなように、日本経済新聞の編集委員はマヌケですね。もっとしっかり勉強してほしい。同じことは、ほかのマスメディアにも言えます。

心配なのは、2月4日の冬季北京五輪開幕を前に、同じような大間違いをほかのマスメディアもするのではないかということです。読者のみなさんもどうか、注目していてください。マスメディアだけでなく、政治家も官僚も御用学者もバカばかりな印象をもつわたしは、とても心配しています。

 

しっかり勉強してほしい

わたしは、大澤真幸の近著『〈世界史〉の哲学』(近代篇1、2)を読んでいて、とても納得したことがあります。それは、近代科学が「無知」を知ったときに誕生したという指摘です。1755年のリスボン大地震まで、ヨーロッパのキリスト教世界に生きていた人々は「智慧」の世界に住んでいただけで、神の思し召しのなかで生きていました。ところが、この大地震で高位の聖職者がたくさん亡くなったことで、人々は自分たちの「無知」を痛感したわけですね。

この教訓は、21世紀を生きるわたしたち全員にあてはまると思います。自分の無知を知らなければ、近代科学と同じく、自らの知性を真に磨くことはできないのです。

たとえば、わたしは自分の無知を知っている。だから、毎日、勉強するのです。6月になれば、The Economistを読みはじめて、まる40年になります。バカであることをしっているからこそ、努力するわけです。もちろん、それだからといってどうということはありません。ただ、自分の人生を豊かにすることにつながっていると、わたしは実感しています。

日経の編集委員は勉強が足りません。ほかの編集委員も同じでしょう。彼らにももっとしっかり勉強してほしいと思います。そして、きちんと訂正し、読者に謝罪してほしいと思います。日経がこの1、2日の間にそれができるか、みなさんにも注目してほしいと思います。

 

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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