TBSのNスタ報道に喝!:Clubhouseを「宣伝」するマヌケさ

2月1日夕刻、TBSのNスタというニュース番組で、音声SNS「Clubhouse」が人気だと紹介していた。しかし、その内容はお粗末であり、公共の電波を使うことの責任をまったく無視したものであった。その怒りを抑えきれないせいもあって、ここでバカもの連中を厳しく批判することにした。

このClubhouseは、声でリアルタイムに語り合えるSNSだ。トークショー、音楽、ネットワーキング、デート、パフォーマンス、政治的な議論など、さまざまなクラブやバーチャルルームで、音声による会話が楽しめる。1人のユーザーが招待できるのは二人。日本では、2021年1月23日から運用がスタートしたばかりである。

 

TBSはニュースとして広告宣伝か

まず、大きな疑念として浮かぶのは、TBSはニュース番組のなかで、このClubhouseアプリを宣伝することで、カネをもらっているのではないかという疑いである。いま現在、地方テレビ局が流している夕方のニュース番組などのなかには、広告料をとっていることを隠して、店舗や会社とタイアップした番組を流すケースが増えている。「ニュース」であるかのようにして、宣伝に協力することで、テレビ局は対価を得るわけだ。

地方のテレビ局の場合、そこまでしないと経営が困難になるほど、追い込まれていると言える。だが、全国放送のTBSまでがそこまで経営難なのか。

おそらくClubhouseの宣伝を流した関係者は音声SNSについて、熟慮したうえで、放送の公共性に十分に配慮したうえで実際に放送するという最低限の努力を怠ったのではないかと思われる。ここでは、この放送について批判するなかで、マスメディアの劣化について考えてみたい。

 

問題点1

まず、Clubhouseの問題点を明確に指摘することを怠ったことはこの内容がClubhouseの宣伝と間違われる原因となっている。番組では、全体として、人気急上昇中のClubhouseを紹介することに力点が置かれ、コメンテーター役の何とかいう元オリンピック選手の女性もClubhouseへの苦言を呈することを怠った。その結果、なぜこんなつまらぬ情報を流したのか、理解に苦しむことにつながったことになる。Clubhouseの宣伝に終始し、こっそりカネをもらっているのではないかと疑われることになったわけである。

ちょっと事情通なら、Clubhouseがとんでもない無責任なSNSであることを知っているはずだ。したがって、筆者はClubhouseを宣伝する行為それ自体が公共性をもつテレビ局が決して行ってはならない大失態であると思う。

その理由は、「音声SNS「Clubhouse」で起きた女性への中傷を巡る激論と、プラットフォームの責務」(https://wired.jp/2021/01/29/plaintext-where-are-the-adults-in-the-clubhouse/)という記事を読んでもらえばわかるだろう。そこに書かれているのは、『ニューヨーク・タイムズ』のテックカルチャー担当記者であるテイラー・ローレンツ記者がClubhouseにおいて、集中砲火に合った経験だ。こうした事態に、Clubhouse側は誠意ある対応をまったくとらなかった。

後に、2020年10月1日なって、会社側は「コミュニティの中庸について」(https://www.joinclubhouse.com/on-community-moderation)を発表する。そのなかで、「第一に、クラブハウスでの反黒人主義、反ユダヤ主義、その他あらゆる人種差別、ヘイトスピーチ、虐待を明確に非難する」とした。「第二に、Clubhouseは単一のコミュニティではなく、相互に接続された多様なコミュニティのネットワークであるという事実を誇りに思っている」としている。これでは、一体、会社としてClubhouseがどのような規制を行おうとしているかはわからない。

そこで、2021年1月6日付で、「コミュニティ・ガイドライン」(https://www.notion.so/Community-Guidelines-461a6860abda41649e17c34dc1dd4b5f)が発表された。その内容を読んでみても、議長役のモデレーター、発言者であるスピーカー、聞き手のリスナーについて、心構えのようなものが書かれているが、それぞれの発言の制限などについて具体的に書かれているわけではない。要するに、Clubhouseの運営は杜撰であり、TBSが宣伝するにはまったく値しない。にもかかわらず、何も知らないマヌケなTBSはClubhouseを宣伝したのである。

 

問題点2

まともなジャーナリストであれば、音声SNSはClubhouseだけではないことを知っていなければならない。「Clubhouseだけじゃない。“音声SNS戦争”の行方はいかに?」(https://wired.jp/2021/01/28/future-of-voice-sns/)という記事を読んでいれば、Clubhouseだけを紹介するのがいかに偏った暴論であるかに気づくはずなのだ。この記事では、2015年にリリースされた音声チャットツール「Discord」があり、現在のユーザーが1億人にのぼると紹介されている。ツイッターも「Audio Spaces」という音声ベースの独自SNSを開発中であることも記されている。さらに、Wavve、Riffr、Spoonといったスタートアップが登場しており、音声SNSへの参入も予想されている。

忘れてならないのは、ポッドキャストの存在である。インターネット上で音声や動画のデータファイルを公開する方法の一つであり、オーディオやビデオでのウェブログとして位置づけられている。音声利用のできるポッドキャストはそれなりに人気をもち、これとClubhouseのような音声SNSとの関係も気になるところだ。

こうした事情を知っていれば、急速に人気になっているという理由だけでClubhouseのみを取り上げるのはおかしい。もっと全体的な音声SNSについて紹介しながら、その問題点を含めて紹介するといった姿勢がなければ、ジャーナリストとして失格だと指摘しておきたい。

 

それにしても、どうしてここまでマスメディアは劣化してしまったのだろう。バカでマヌケな奴らばかりではないか。本当に心から、もっと勉強しろと言っておきたい。せめて筆者の「論座」くらい、眼光紙背に徹するくらいにしっかりと熟読してほしい。

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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