NHKのひどさ:受信料を払う価値なし

NHKのひどさ:受信料を払う価値なし

9月23日、国連でClimate Action Summit 2019が開催される。にもかかわらず、NHKはこのサミットを「温暖化対策サミット」と平然と誤訳している。すでに、このサイトで指摘したように、いま問題になっているのは、「温暖化」ではなく「気候変動」であって、安易に「温暖化対策サミット」などと訳して、したり顔をしているNHKは受信料を払う価値などまったくない、どうしようもない「フェイク情報機関」であると言わざるをえない。

地球上の平均気温はたしかに上昇している。しかし、それは地球全体が温かくなっていることを意味しているわけではない。これが決定的に重要な点だ。地球温暖化という、日本のマスメディアが多く使っている用語は多くの国民に誤解を与えるだけであり、世界中の多くの地域と同じように、あくまで「気候変動」(Climate Change)と理解すべきものなのだ。

The Economist, Sep. 21st, 2019にある図をみればわかるように、1951~1980年の平均との偏差として表された2018年の気温をみても、大西洋の北部や南極周辺部は気温が低下している。

とくに重要なのは、大西洋の気温低下だ。北極の氷山が解けることで、その溶融によって引き起こされる深層海流の流量が減り、それがメキシコ湾流の流量や流速を損ねて、これまでヨーロッパに温かい空気を送り込んでいた動きが衰え、それが気温低下につながっているのだ。ゆえに、ヨーロッパの一部では、気候がこれまでに比べて暖かくなるのではなく、むしろ低くなる可能性がある。ゆえに、「地球温暖化」などという、「ノー天気」な表現は不適切なのである。

 

気候変動の最大の問題

ここで、筆者が1年ほど前に書いた文章を紹介しよう。「です・ます調」で書いたものなので、そのまま直さずに縦書きを横書きにして示してみよう。

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「地球温暖化は人間によるものである」という命題をもっともらしく主張してきた元凶は国連の下部機関、「気象変動に関する政府間パネル」(Intergovernmental Panel on Climate Change, IPCC)です。1988年に国連の世界気象機関(World Meteorological Organization, WMO)と国連環境計画(United Nations Environment Programme, UNEP)によって設立されたもので、国連総会でも承認されました。注意すべきことは、この機関は決して科学者によって設立されたものではないことです。ゆえに、IPCCは自ら調査を行うわけではなく、科学者などの調査報告に関する評価をくだす二次機関にすぎません。はっきりいえば、官僚が仕事にありつくための機関であり、地球温暖化による危機を喧伝すればするほど、自らの存在価値を高めることができるのです。

このパネルは政府や国際機関によって承認された代表者から構成されています。つまり、単独者として、国家を信じない、独立した、大いに真っ当かもしれない科学者は排除されていることに留意しなければなりません。こんな構造をもつ機関でありながら、IPCCは米国の政治家、アル・ゴアとともに二〇〇七年のノーベル平和賞を受賞したことで、地球温暖化問題の「権威者」であるかのような立場を固めるようになります。同年の第四回評価報告書には、「過去五〇年にわたる地球の平均気温上昇のほとんどは人間の活動にためである可能性がきわめて高い(専門家の判断に基づくと九〇%以上)」と書いてあります。

しかし、これはまったくの推測であって、ニュートンの万有引力の法則と比べると、その科学的根拠は乏しいと指摘せざるをえません。もちろん、わたしはこの問題の専門家ではありません。ただ、学者として社会科学という、自然科学に比べてかなりいかがわしい学問で飯を食っている者としていえば、この報告書はわたしの書く、いかがわしさの残る論文の域を出ていないのではないかと思えます。それを教えてくれるのがMike Hulme著Why We Disagree About Climate Change: Understanding Controversy, Inaction and Opportunityという本です。「コンセンサス」の形成によって、それが科学的であるかのように信じさせるIPCCのやり口を批判しています。二〇〇一年に公表された第三回報告書で、二一〇〇年までに上昇する地球の海面が九~八八センチから、二〇〇七年の第四回報告の一八~五九センチに修正されたのは、本当に気象変化に対する理解が深まったからなのでしょうか。

地球温暖化が人為的なものであるとすれば、将来の地球温暖化は人口予測に大いにかかわっていることになります。たとえば、二〇〇〇年のIPCC特別報告では、二〇五〇年の人口を、八七億人、九三億人、一一三億人の三つのケースを想定しています(二〇〇〇年の世界人口は約六八億人)。最大差は二六億人になります。これだけ大きな差を前提にしてしまうと、それだけで気温差に大きな影響をおよぼしてしまうのではないでしょうか。二〇一七年六月、国連経済社会局は世界人口が現在の七六億人から二〇五〇年に九八億人に、二一〇〇年に一一二億人に達するとの予測を公表しました。人為による気候への影響を認めるのであれば、人口数そのものに手をつける議論をなぜしないのか。「バース・コントロール」が人権侵害だというのであれば、他方で人為による気候変動は人間の自然権とでもいうのでしょうか。

科学的とはいえないような根拠であっても、環境問題がクローズアップされ、地球規模で環境保護を重視する合意が形成されたのは「いいことだ」と考える人々がいるかもしれません。しかし、この合意形成を誘導した勢力がいて不当な利益を得ているとすれば、そう単純にパリ協定を首肯することはできないのではないでしょうか。

それではだれがその合意形成で得をするのでしょうか。その答えは核発電所(nuclear power plant)の推進論者です(以下、原子力発電所という誤訳は使用しない)。核発電は直接的には二酸化炭素のような温暖化ガスを発生させません。ゆえに、パリ協定は核発電推進論者にとってはこのうえのない決定ということになります。しかも、パリは核発電を世界でもっとも推進してきたフランスの首都であり、パリ協定の背後に核発電推進論者の影がちらついていると論じても、真っ向からこの議論を否定できる者はいないでしょう。

このように、真摯に気候変動問題を考えてみると、トランプ大統領のパリ協定離脱という決断は決して荒唐無稽なものではないことがわかるのです。むしろ、合意形成に潜む陥穽に気づかせてくれるという意味で、称賛に値する英断であったということも可能です。問題なのは合意形成に潜む罠について言及しないマスメディアの「合意のでっち上げ」にあるのです。日本では、とくに「合意」部分が重視されるために「でっち上げ」部分への警戒が足らないと、わたしには思われます。

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さらに、気候変動予測はきわめて難しい。その理由については、“Predicting the climatic future is riddled with uncertainty”というThe Economist, Sep. 21st, 2019の記事に詳しい。

わたしは気候変動が人為的なものであるかどうかについてはわからない。ただ、気候変動が厳しさを増している以上、何らかの人為的対策があってもいいと思う。問題は、その対策への科学的根拠をわかりやすく示せるかどうかにかかっている。

気候変動を温暖化と誤訳するような機関が受信料を徴収しながら、フェイクニュースという出鱈目を流しているような状況下では、冷静でより客観的な議論ができないのではないかとの危惧が広がるばかりなのである。

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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