政治の笑止千万
政治の笑止千万
「れいわ新選組」の比例区大勝を予測しましたが、残念ながら大勝とまではいかなかったようですね。わたしは、政党交付金の対象となるための得票率2%をクリアするだけでなく、山本太郎を含む3人の当選を想定していました。しかし、そこまでには至りませんでした。
それでも、「NHKから国民を守る党」の立花孝志が当選したことで、もう一つの「ラディカルズ」の一角が存在感を示したことはいいことだと思います。
もっとも、笑止千万なのはDishonest Abe一派がほとんど痛手を受けなかったことです。安倍晋三の「フェイク政治」に多くの有権者が騙されている事実が確認されたことになります。日本銀行が国債や株式を買いまくって、いまの日本経済を支えている「現実」を知らない国民はDishonest Abeの術中にはまってしまっているのです。
Dishonest AbeはまさにそのDishonestゆえに、国民を騙すことに成功したのでしょうか。GDPさえ改竄している可能性のあるのに、そうした問題を国会の場で議論させない。予算委員会を開かないことで、そもそも民主主義を否定しています。検察を抱き込んで、公文書を改竄しても罪にさえ問わない。統計を改竄しても、当事者は刑事責任さえ問われない。国会でまったくの虚偽答弁に終始した女性局長は首にもならない。まったく出鱈目な政治をしながら、ここまで国民を欺けるというのはそのDishonestさの徹底の結果なのでしょうか。
トランプと同じやり方
Dishonest Abe一派は明らかにドナルド・トランプと同じやり口をとっています。トランプ陣営は、イタリアの社会主義者、アントニオ・グラムシの主張を逆手にとって利用することに成功しています。少しだけ、わたしの本(『サイバー空間における覇権争奪:個人・国家・産業・法的規制のゆくえ』[社会評論社, 2019年8月刊行])の中身を紹介してみましょう。
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「グラムシを逆手にとったトランプ
もちろん、「マシーン信頼」を支持すべきだと言っているわけではない。歴史の流れを冷徹にながめ、その位相をよく理解したうえで対処すべきであると強調したいのだ。本書の冒頭でグラムシを紹介したが、グラムシは社会が「支配」ないし「力」および「ヘゲモニー」の組み合わせを通じてその安定性を維持していると考えた。このとき、ヘゲモニーは「知的・道徳的指導権」への合意と定義された。社会秩序は社会的境界線とルールを維持するために暴力的に権力や支配を執行する機関・集団(警察、軍隊、自警集団など)と、ヘゲモニーの創出を通じた支配的秩序ないしイデオロギー的支配(市場資本主義、ファシズム、共産主義など)への合意を説く機関(宗教、学校、マスメディアなど)によってつくり出され、また再生産される。とくに、ベニート・ムッソリーニによって投獄された彼はこうした自説を刷新・拡張したのだが、そうした彼の思想はフランクフルト学派へと受け継がれ、『複製技術時代の芸術』のウォルター・ベンヤミン、文化産業の欺瞞を暴いた『啓蒙の弁証法』を書いたテオドール・アドルノとマックス・ホルクハイマーの著作へとつづいた。
注目すべきはこのグラムシを源流とする「左翼思想」が米保守主義の代替として登場した「オルタナ右翼」(Alt Rights)に取り入れられ、トランプ政権誕生の原動力となったことである。グラムシは常識と翻訳されることの多い“common sense”(イタリア語でsenso comune)に注目する。このとき彼が力点を置いたのはcommonの側であり、そこで重要なのは集団的で社会の有力な要素となった意見の総体であり、ラディカルな変革をもたらしうる政治運動を動員する「知恵」なのだ。とくに、社会・政治・経済・地理的に阻害された従属者である「サバルタン」のような人々に働きかけ、彼らにとっての「真実」をグラムシのいうcommon senseとして提示し際限なく繰り返すことで、彼らにcommon senseとして受け入れてもらえれば、彼らの支持は絶大となる。このとき、真実に基づく論拠はいらない。
このやり方こそ、トランプの手法なのである。問題はその彼が大統領に就任したことで国家自らが信頼を損ねる行為を繰り返していることだ。弱体化しつつあるとはいえ、覇権を握る米国がこのあり様なために「国家信頼」は急速に衰えている。トランプのやり方を模倣する政治家が増殖する一方で、「国家信頼」を支えてきたマスメディアは「フェイクニュース」と揶揄されて力を失いつつある。これがいまの歴史的位相なのだ。だからこそ、世界全体が「マシーン信頼」や「ネットワーク信頼」へ傾いても仕方ない状況が生まれていると言える。」
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ここで説明したこととよく似た現象が日本でも起きています。真実かどうかを問うことなく、アベノミクスの「成果」を喧伝したり、国会審議自体を封殺して真実かどうかを問うこと自体を禁止したりするなかで、嘘を繰り返し流してそうした嘘をcommon senseとして国民に受けいれさせるわけです。
日本にとって不幸なのは、アメリカで起きているトランプのインチキを見破ることはできても、Dishonest Abeのインチキを糾弾できるだけのマスメディアがないことです。Dishonest Abeを鋭く批判しているのは金子勝くらいでしょう。
マスメディアへの叱咤激励
アメリカの場合、トランプににらまれたCNN、New York Times、Washington Postが比較的よく頑張っているようです。わたしはCNNを観ていないのでなんとも言えませんが、後者二つは毎日読んでいます。この経験からすると、トランプ批判をしっかりと展開しているように思えます(米アマゾン創業者でCEOのジェフ・ベゾスがWashington Postを買収しましたが、今後、「テック・ジャイアンツ」規制をめぐってトランプとWPとの駆け引きが注目されます)。
これに対して、日本はどうか。わたしは日本の新聞を購読していませんから、偉そうなことはなにも言えません。それでも、喫茶店やホテルのロビーで読んでいる印象では、Dishonest Abe批判がものたらないように思えます。その結果として、これだけ多くの日本国民が安倍晋三一派によって騙されてしまっているのです。
そうであるならば、日本のマスメディアもせめてアメリカ並みにもっと辛辣にDishonest Abeを批判すべきだと思います。そうでもしなければ、嘘が真実であるかのようにcommon sense化してしまいかねません。
ペンタゴン・ペーパーズ
若い人は、ぜひとも映画「ペンタゴン・ペーパーズ」を観てください。その解説(https://eiga.com/movie/88119/)を以下に引用しておきます。
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巨匠スティーブン・スピルバーグ監督のもとで、メリル・ストリープとトム・ハンクスという2大オスカー俳優が初共演を果たした社会派ドラマ。ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国民の間に疑問や反戦の気運が高まっていた1971年、政府がひた隠す真実を明らかにすべく奔走した人物たちの姿を描いた。リチャード・ニクソン大統領政権下の71年、ベトナム戦争を分析・記録した国防省の最高機密文書=通称「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在をニューヨーク・タイムズがスクープし、政府の欺瞞が明らかにされる。ライバル紙でもあるワシントン・ポスト紙は、亡き夫に代わり発行人・社主に就任していた女性キャサリン・グラハムのもと、編集主幹のベン・ブラッドリーらが文書の入手に奔走。なんとか文書を手に入れることに成功するが、ニクソン政権は記事を書いたニューヨーク・タイムズの差し止めを要求。新たに記事を掲載すれば、ワシントン・ポストも同じ目にあうことが危惧された。記事の掲載を巡り会社の経営陣とブラッドリーら記者たちの意見は対立し、キャサリンは経営か報道の自由かの間で難しい判断を迫られる。第90回アカデミー賞で作品賞と主演女優賞にノミネートされた。
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なにが大切かを教えてくれる映画です。できれば、朝日新聞こそNYTやWPのような気概を取り戻してほしいと心から願っています。
ついでに、「新聞記者」という映画も紹介しておきましょう(https://eiga.com/movie/90346/)。といっても、こちらは観ていないし、実話に基づく話ではないのであまりお勧めしませんが、それでもフィクションが真実以上であることもあるので、一度、観てみるのもいいでしょう。
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「怪しい彼女」などで知られる韓国の演技派女優シム・ウンギョンと松坂桃李がダブル主演を務める社会派サスペンス。東京新聞記者・望月衣塑子の同名ベストセラーを原案に、若き新聞記者とエリート官僚の対峙と葛藤をオリジナルストーリーで描き出す。東都新聞の記者・吉岡エリカのもとに、医療系大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届く。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、強い思いを秘めて日本の新聞社で働く彼女は、真相を突き止めるべく調査に乗り出す。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原は、現政権に不都合なニュースをコントロールする任務に葛藤していた。そんなある日、杉原は尊敬するかつての上司・神崎と久々に再会するが、神崎はその数日後に投身自殺をしてしまう。真実に迫ろうともがく吉岡と、政権の暗部に気づき選択を迫られる杉原。そんな2人の人生が交差し、ある事実が明らかになる。監督は「デイアンドナイト」の藤井道人。
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あきらめたら終わりです。衆議院選挙に向けて、「ラディカルズ」の今後に期待しつつ、ごく一部でいいからマスメディアの奮起に期待したいと思います。
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