Dishonest Abeに教えたいフィデュシャリー・デューティ(Fiduciary Duty):ディスインフォメーションへの対抗策
Dishonest Abeに教えたいフィデュシャリー・デューティ(Fiduciary Duty):ディスインフォメーションへの対抗策
塩原 俊彦
ディスインフォメーション(disinformation)は情報受信者に「意図的で不正確な情報」を伝達してその混乱や疑心暗鬼を招き、不安に乗じて情報発信者の利益をはかろうとする工作に使われている。
その例として記憶に新しいのは、2017年5月22日付の読売新聞朝刊である。「出会い系バー通い『実地調査』」という見出しで、売春客となっていたかのように報道している。学校法人「加計学園」をめぐって「総理のご意向」と記した文書の存在を本物と証言していた前川発言の価値を貶めようとした記事だ。これは典型的なディスインフォメーションそのものと言わなければならない。
『週刊現代』(2017年6月10日号)は、与党幹部の証言として「北村滋内閣情報官、中村格警察庁刑事局組織犯罪対策部長が情報を流したと聞いている」と報じた。このディスインフォメーションの裏には、Dishonest Abeに近い人物がいるとみて間違いないだろう。
このディスインフォメーションでは、出会い系バーに頻繁に出かけ、売春をしていたかのような印象を与える記述がならんでいる。「不正確な」情報をあえて流して、前川への悪印象を醸成し、前川の厳しい安倍批判への対抗措置としようとしている。
こんな出来事が実際に起きてから、1年もたたないうちに、今度は文部科学省が名古屋市立中学校で講師を務めた前川喜平・前事務次官の授業内容や録音データの提出を市教委に求めていた事件が発覚した。Dishonest Abeおよびその周辺は情報の重要性に周知しており、こうした脅しを通じて、Dishonest Abeへの「裏切り者」を懲らしめ、追随者が出ないように脅しているのかもしれない。これでは、独裁者プーチンのもとで「裏切り者」が相次いで消されているロシアのような状況に日本もなりかねないことの示唆である。
ディスインフォメーション対策
すでにこのサイトで何度も論じているように、Dishonest Abeはこれ以外に、自らディスインフォメーションを垂れ流しつづけている。わたしたちはDishonest Abeのディスインフォメーションにどのように立ち向かったらいいのだろうか。前述した例でいえば、読売新聞社内にいる良心をもったジャーナリストを励まし、権力に迎合した連中を糾弾すべきであろう。
読売新聞の幹部は猛省すべきだが、かれらはみなDishonest Abeと同じくDishonestであろうから、反省などするはずもない。そうであるならば、かれらに信頼を裏切る行為自体が法律違反になるという枠組みをつくればいい。
それが「フィデュシャリー・デューティ」(Fiduciary Duty)という考え方である。わたしは、2003年に上梓した『ビジネス・エシックス』(講談社現代選書)のなかで、この考え方を紹介した。関心のある方は樋口範雄著 (1999) 『フィデュシャリー[信認]の時代』有斐閣をぜひ読んでもらいたい。わたしの主張の淵源はこの本にあるのだから。加えて、拙著『官僚の世界史』でも、この見方と「スチュアードシップ」という見方を簡単に論じた。
株主(委託者、受益者)が取締役(受認者)に会社経営を委託するという信認(フィデュシャリー)義務を課すことで、信認を受けた取締役がその義務に反した場合には損害賠償の対象となると定める米国流の「フィデュシャリー・デューティ」(Fiduciary Duty)という考え方をもっと広範に認めて、信認(フィデュシャリー)義務によって信頼を守るように促す仕組みが必要なのではないか。株主と取締役との関係だけでなく、選挙民と議員、患者と医者、読者と新聞社といった、情報の非対称性がある関係に広範囲に「フィデュシャリー・デューティ」(Fiduciary Duty)を導入して、信頼維持を促すのである。
これまで何度か、ディスインフォメーションとDishonest Abeについて論じてきたが、わたしが本にしようとしているディスインフォメーションという概念がいかに重要か、わかってもらえただろうか。
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