ウクライナ和平をめぐって:日本の報道は「殺人幇助」の罪を犯している!?

2月2日の講演会が間近に迫ってきた。ウクライナ和平について話そうと思っているので、1月29日にBS TBS、30日にBSフジの報道番組を部分的に覗いてみた。結論からいうと、司会者も登場した似非専門家ともに、ディスインフォメーションを撒き散らしていた。つまり、日本国民を騙していた。あるいは、能力が低すぎて、彼ら自身、騙していることに気づいていないのかもしれないが。

 

司会者の罪

「問う」視角が議論の方向性を決定づけることはだれでも知っていることだろう。そうであるとすると、司会者は論点や議論の対象について、本当は、対話者以上に知悉していることが求められる。そうでないと、議論の方向性を誤ってつまらない議論に陥ったり、時間を浪費したりするからだ。

この意味で、TBSもフジも司会者がアホすぎる。まったく勉強不足だ。こんな連中が日本全体の知的水準を貶めているのだろう。それを似非専門家が助長している。彼らもまた、私からみると、まったく勉強が足りない。アホそのものだ。

 

戦争終結への視角

戦争の終結・和平を論じる視角は、「戦争継続派」と「和平派」の出方をどうみるかという視角にかかわっている。それぞれの主張がウクライナ、ロシア、アメリカ、ヨーロッパでどう展開されているかを丹念に見極めなければ、戦争が今後、どうなるか、あるいは、どうしなければならないかという議論につながらない。

残念ながら、私が眺めた二つの報道番組は、この視角がまったくなかった。要するに、この議論の基本中の基本さえ彼らは理解していなかったのだ。しかも、ウクライナにおける「戦争継続派」と「和平派」という、戦争当事者の視角がすっぽりと抜け落ち、米ロの視点からしか議論していなかったから、まったく話にならない。こんなアホどもが大間違いの議論を公共の電波を使って流しているのだから、あきれ果てるしかあるまい。

 

ゼレンスキーの大罪を隠すという罪

すでに「現代ビジネス」や「知られざる地政学」の連載で何度も書いてきたように、ゼレンスキーは「戦争継続派」として、すでに事実上、負けている戦争を継続しようとしている。それは、「現代ビジネス」において1月2日付で報じられない真実】3年目の新年、すでにウクライナ戦争の勝負は決している!」に書いた通りである。

不可思議なのは、私の「現代ビジネス」で掲載した記事をまとめたサイトにおいて、この記事がないことだ。理由は知らない。ただ、想像してみると、おそらく、あまりに的確な論考について、苦情があった可能性がある。的を射た論考を日本国民にみせたくない「戦争維持派」が日本国内にもいるという証拠になる。

この記事で、私は、ウクライナ兵が大勢脱走している事実を明らかにした。とくに、フランスで訓練を受けた第155旅団が戦わずして総崩れになったことを紹介した。これは、事実であり、2025年1月16日になって、親バイデン派のThe Economistでさえ、「旅団の約3分の1に当たる1700人が無断欠勤し(一部は元の部隊に戻った)、50人がフランスで脱走した」と報じた。「第155旅団の費用は約9億ユーロ(9億3000万ドル)にのぼると言われている」とも記述されている。この大失敗は、西側の軍事支援そのものの問題でもあるのだ。

ウクライナの「キーウ・インディペンデント」は、ウクライナ地上軍司令官のミハイル・ドラパツィイは、1月6日の記者会見で、フランス軍の訓練を受けた第155旅団が「高い離職率や組織力の低さなど、重大な課題を抱えていることを認めた」と報じた。この旅団は約5800人の兵士で構成される予定であったが、フランスで訓練を受けたのは2000人にも満たなかったという。パリが訓練と武器提供の約束を果たしたにもかかわらず、ウクライナのメディア Censor.net の編集長であるユーリ・ブツォフによる調査では、この旅団の創設と管理に問題があったことが指摘されており、「発砲前に1700人の兵士が部隊から無断離隊した」と書かれている。

1月23日には、第155旅団の元司令官も拘束され、その翌日から裁判がはじまったという情報も報じられた

それにもかかわらず、日本の主要マスメディアはこうした「戦争継続派」に不都合な事実をまったく報道しない。なお、この問題は2月2日と3日に公表される「知られざる地政学 連載【75】」に詳しく紹介しておいたので、そちらを参照してほしい。

 

ポクロフスク近郊のコークス炭鉱を失う

先に紹介した1月2日付の拙稿では、ドネツク州のポクロフスク(ポクロウシク)近郊にあるコークス用炭鉱がロシア側に落ちた話も書いておいた。これで、ウクライナの粗鋼生産は半分以下に減少すると予測されている。粗鋼はウクライナの主たる輸出品だから、これにともなう経済損失は計り知れない。NYTも1月15日になって、「ウクライナの重要な炭鉱における最後の抵抗の内幕」という記事をようやく掲載した。日本の主要マスメディアはこの情報も無視を決め込んでいる。いかに、戦争継続派が多いかを物語っている。

さらに、空軍の解体という事実についても、「戦争継続派」は無視している。これは、私の1月2日付の記事掲載後にわかった話だが、「キーウ・インディペンデント」は、「空軍から地上軍への約5000人から6000人の兵士の移籍は今年1月に始まった」と報道している。「ウクライナ・プラウダ」は1月14日付で、最高司令官オレクサンドル・シルスキーからの人員移籍に関する最新の命令が1月11日に空軍部隊に届き、「5000人以上の兵士が陸軍に移籍することになった」と伝えている。1月16日付の「キーウ・インディペンデント」は、「「不条理な現象」-ウクライナ空軍弱体化という脅威をもたらす人員問題」というタイトルの記事のなかで、14日に公開された動画のなかで、兵士が明らかにした話を伝えた。この時点までに、ウクライナ軍司令部は、ビデオ公開時点で218人の専門家を歩兵部隊に異動させようとしており、それより前に、すでに250人が異動したというのである。

このようにみてくると、ウクライナ軍はどうみても戦争に負けている。百歩譲っても、敗色濃厚だ。そうであるならば、なぜゼレンスキーは戦争を終結しようとしないのか。戦争継続は、ウクライナ国民の死傷者を増やすだけであり、いわば、人殺しであると指摘せざるをえない。

そして、そんなゼレンスキーを支援し、なおもウクライナ人に戦争継続をさせようとする行為もまた殺人幇助そのものではないか。さらに、こうした「戦争継続派」をまったく批判しないマスメディアや政治家もまた殺人幇助の罪を犯していると言えまいか。とくに、秋元某のような「戦争継続派」は断じて許されない。

 

「しっかりしろよ」日本のマスメディア

この事実上のウクライナの負けを日本で最初に報じた私の記事を封じ込めようとする勢力が日本に存在するのは、たぶん、たしかだろう。実は、「戦争維持派」は世界中に存在し、猛威を振るっている。ロシア経済はもう破綻寸前だから、もう少し戦争を継続すれば、勝利できるといった、まったく間違った報道が世界中で増えているのもこのためだ。

「現代ビジネス」において1月12日付で公開した「西側諸国で蔓延する「ロシア経済崩壊論」の嘘八百を暴く」を読んでもらえば、こうした「戦争継続派」の実態がわかるだろう。

私が啞然とするのは、ロシア経済について、何も知らないようなアホがコメントし、それを掲載することで「戦争継続派」に味方している事態だ。私はそもそも、ソ連経済政策を専攻し、ロシア科学アカデミー附属中央数理経済研究所が主宰する学術誌『現代ロシアの経済学』の編集委員を務めていた人間として、こうしたアホどもを批判したい。学術的根拠に欠ける情報を低能な似非専門家がそもそも発言すること自体が不誠実なのである。そして、そうしたアホの発言をマスメディアが報道すること自体が「罪」なのだ。

こうした「戦争維持派」の根拠のない話を日本の主要マスメディアは臆面もなく喧伝しつづけている。そう、彼らは「戦争継続派」による情報操作に加担することで、ウクライナ国民、ロシア国民、北朝鮮国民の死傷者数を増やすのを手伝っていることになりかねない。まさに、殺人幇助の罪を犯しているのではないか。

こうした許されざる罪を犯している人々の罪を一刻も早く止めなければならない。いま、そんな悲壮感から、これを書いている。そして、そうした話を2月2日の講演会で話そうと考えている。

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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