森喜朗を糾弾せよ、同時に国際オリンピック委員会の商業主義を批判せよ:嘉納治五郎記念センターの活動停止の理由を探れ

森喜朗の失言をここで取り上げるつもりはない。ここで取り上げたいのは、国際オリンピック委員会(IOC)の腐敗の問題であり、日本のIOCおよび東京五輪・パラリンピック組織委員会の腐敗の問題だ。森喜朗はこの腐敗に絡んでいる。日本のマスメディアがこの問題を徹底追及しないままに放置してきたことが森の増長につながったとも考えられる。

 

 ロイター電に注目

2020年3月31日付のロイター通信(https://jp.reuters.com/article/olympics-2020-lobbying-idJPKBN21I0RP)は、「東京五輪招致で組織委理事に約9億円、汚職疑惑の人物にロビー活動も」という記事を伝えた。そのなかで気になる記述をいくつか紹介してみよう。

「ロイターが入手した「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」(招致委)の銀行口座の取引明細証明書には、招致活動の推進やそのための協力依頼に費やした資金の取引が3000件以上記載されており、多くの人々や企業が資金を受け取り、東京招致の実現に奔走した経緯をうかがわせている。

そうした支払いの中で最も多額の資金を受け取っていたのは、電通の元専務で、現在は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(組織委)の理事を務める高橋治之氏(75)だ。招致委の口座記録によると、高橋氏にはおよそ8.9億円が払われている。」

その一方で、ロイター電では、「森元首相の団体にも資金」という見出しのもとに、つぎのような記述がある。

「ロイターの取材により、招致委員会は森喜朗元首相が代表理事・会長を務める非営利団体、「一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター」にも約1億4500万円を支払っていることが明らかになった。

招致委が高橋氏、および組織委会長でスポーツ界に強い影響力を持つ森氏の団体に行った資金の支払いは、ロイターが確認した同委のみずほ銀行の口座記録に記載されている。この銀行口座の記録は日本の検察がフランス側に提供した。仏検察の捜査関係者によると、高橋氏や森氏の団体に対する支払いについては、これまで聴取を行っていない。」

 

 消えた一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター

 きわめて不可解なのは、この森が会長を務める一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センターが2020年末に活動を終了していたという事実である。2021年1月26日にロイターは、「嘉納治五郎記念センターが昨年末で活動終了、五輪招致に関与」という記事(https://jp.reuters.com/article/tokyo-olympics-kano-mori-idJPKBN29V0L5)を配信した。たしかに、同センターのホームページ(http://100yearlegacy.org/)にアクセスすると、「「一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター」は2020年12月末をもちまして活動を終えました」と書いてある。

記事によると、「多羅尾光睦・副知事が評議員を務める東京都の担当者は「(同財団の)活動が終了することについては説明を受けていないし、知らなかった」と話した」という。ますます怪しい。

この財団は2009年5月に設立されたもので、日本オリンピック委員会の創設者、嘉納治五郎の理念を継承し、スポーツ国際交流・協力などの活動を通して国内外のスポーツ発展をはかることなどを目的としているというのだが、そんな組織がなぜ突然、活動を停止したのか。問題の約1億4500万円を、森が評議会議長を務める招致委員会がなぜ森が同じく森が会長の嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センターに支払ったのかという疑惑隠しのためではないのか。

日本の国会議員はこの問題を国会で追及してほしい。同時に、マスメディアはロイターによる報道をもとに、この疑惑を徹底的に取材すべきだろう。

 

ビジネスのために日本国民の命を奪うIOC

ついでに指摘したいのは、IOCが日本国民の命を代償に、自分たちのビジネスを優先しようとしている問題だ。まさに世界全体がパンデミックのもとにあるとき、日本でオリンピックを開催することなどできるはずもない。たとえ無観客で競技をする場合でも、世界中から集まる選手や審判などの感染予防対策にさかなければならない医療従事者の数は延べ1万人を超えるのは間違いない。

これが意味しているのは、そのために、日本人の人命が確実に失われることだ。オリンピックのために、日本の医療が手薄になり、その結果として国民が死んだり、病状悪化を余儀なくされるのは100%確実だ。

それでもオリンピックをやろうとしている連中は「殺人」に手を貸しているとも言えるかもしれない。

IOCやJOCがオリンピックを是が非でもやりたがっているのは、「ビジネスのため」である。テレビの放映権料を得ることで、自分たちの懐を温めたいだけなのだ。だが、それは、日本国民の命と暮らしを脅かすことになる。

海外から数万人が押し寄せれば、新型コロナウイルスのさまざまな変異種が国内に流入することにもつながる。その結果、日本人の命がさらに奪われることにもなるだろう。

こんなことはわかりきっているにもかかわらず、なぜオリンピック開催にこだわるのか。こだわる連中の多くは、IOCと同じく自分の懐を温めたいだけの話なのではないか。違うというのであれば、「森のかかわってきた嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センターへの支払い問題を徹底追及しろ」と言いたい。

読者にみていてほしいのは、この問題について、新聞やテレビが今後、どう報道するかである。すでに、「森喜朗会長がトップを務める財団が突然の「活動終了」…東京五輪中止の“前兆”か」という記事(https://news.yahoo.co.jp/articles/a1484aa436a783c0797d35a5e713e372ea18063e)を1月30日に日刊ゲンダイが伝えている。ほかのマスメディアも頑張ってほしいと心から願っている。

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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